第15話 女のセクハラ
「あぶねえ!」
「うわっ!」
スライムから粘液が吐き出された瞬間に俺はその場から突き飛ばされた。
「ミーニさん!」
「へへっ、問題ねえよ。トオルは大丈夫だったか?」
「はっ、はい! ミーニさんのおかげで助かりました」
確かに俺は大丈夫だった。ルナさんがゴブリンを斬ってくれて、ミーニさんがスライムの粘液から守ってくれたおかげで傷もないし服も無事だ。
ただひとつ問題があるとすれば、俺をかばってくれたことによって、ミーニさんの服が溶けてそのおわん型の美しいお胸が露わになってしまったことだ。
ぬあああああ! 痛い、また頭痛が!
至近距離でみる女性の胸はなんて迫力だ! しかも短い間だが普通に話していた知り合いの胸だから、さらに破壊力がヤバい! 下手をすれば前に女性の胸に触った時以上に興奮して、かなりの頭痛がしてきた。
「トオル、大丈夫か! どこかに怪我をしたのか!?」
「い、いえ大丈夫です! そ、それよりもミーニさんの服が!」
「ああ、スライムの粘液は人体には害がねえから大丈夫だぞ。ほら、見てみろよ。傷ひとつねえだろ?」
いや、見られんって!!
個人的にはものすごく見たいのだが、見てしまえばまたかなりの頭痛が襲ってくる!
ぐわあああ、マジでこの呪いは最悪過ぎるんだよ!
「だ、大丈夫なら良かったです。は、早く胸を隠してください!」
「んん、別に俺の胸なんて見えてたってどうでもいいだろ? なんならいくらでも触っていいぞ」
「ええっ!?」
マ、マジでいいの!? なにそれ、めちゃくちゃ触りたい!
ええい、こうなったら頭痛がなんだ。男たるもの、一時の快楽のためなら、そのあとの頭痛なんてどうでもいいのだ! ありがたく触らせていただきます!
「痛え!」
「馬鹿、トオルにセクハラしているんじゃねえよ。トオルを粘液から守ったのは良くやったが、男へのセクハラは見過ごせないぞ」
「ああ、メラルの言う通りだな」
メラルさんがミーニさんの頭を叩いて替えの服を渡している。
「なんだよ、冗談だっての! トオルもからかって悪かったな。そりゃ女の胸なんて触って喜ぶ男なんていねえよな」
ここにいるよ!
なんなら元の世界の男ならほぼ全員が女性の胸を触りたいと思っているからね!
「……いえ、大丈夫ですよ」
とはいえ、さすがにそんなことは言えなかった。そうか、こっちの世界だと女性が男性に無理やり自分の胸とかを触らせるのはセクハラ行為になるのか……
なにそれ最高か!? 俺もめっちゃセクハラされたい! 女性教師とか年上のお姉さんからめちゃくちゃセクハラされたいんだけど!!
「トオル、今日はお疲れ。また明日同じ時間に頼むぞ」
「はい、今日は本当にありがとうございました。それに依頼報酬も全部貰ってしまってすみません」
「気にすんなよ、スライム討伐は新人の特権だからな。それより明日からもよろしくな!」
「はい、こちらこそよろしくお願いします!」
冒険者ギルドへ戻ってスライムの討伐を報告する。スライムの討伐依頼は新人冒険者であるFランク冒険者しか受けることができない。新人冒険者への配慮として討伐難易度がとても低い割にそこそこの報酬がもらえるのだ。
しばらくの間は午前中ルナさんたちに俺の依頼に付き合ってもらう。完全な寄生プレイ……いや、殿プレイになってしまうのは申し訳ないので、早く俺も役に立てるようにならなければならない。
ルナさんたちも俺の依頼にずっと付き合っていては生活できないので、午後からはいつも通りの依頼を受けるそうだ。俺は俺で冒険者ギルドにある資料を読んだり、筋トレをしたりして自身を鍛えていくつもりである。
いくら姫プレイをしたり、味方を援護するとはいえ、冒険者としてやっていく以上、基本的な身体能力は必要になるからな。ルナさんたちの足を引っ張らないように頑張るとしよう。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「おかえりトオル、大丈夫だったかい?」
「ただいまです、マーリさん、レイモンさん。はい、怪我は少しもありませんよ」
時刻は夕方、冒険者ギルドの訓練場にて鍛錬を行い、ヨーグル亭へと帰ってきた。
やはり男性冒険者は本当に珍しいようで、冒険者ギルドの訓練場で鍛錬をしていると、たくさんの女性冒険者が声をかけてくれ、効率の良い鍛錬方法を教えてくれたりもした。本当にこの世界の女性は男性に優しい世界だ。
……まあ、その女性冒険者の大半からはパーティや食事に誘われたから、下心は満載だったと思うがな。それにしても綺麗な女性冒険者からのお誘いを断るのはものすごく心苦しかったぜ。
「すぐにお店に出る準備しますね」
急いで普通の服に着替えてお店の手伝いをする。この世界では夕方からのこの時間が一番忙しい時間帯になるので、この時間はお店の手伝いをする。悲しいことに、このフリフリのエプロンも慣れたものである。
「おう、トオル。久しぶりだな。エールを2杯頼むぜ!」
「……トオル、久しぶり」
「いらっしゃいませ、アンリさん、エルネさん。エール2杯ですね、かしこまりました」
この店の常連である冒険者のアンリさんとエルネさんが来てくれた。
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