第13話 殿プレイ
「ああ、私がプレゼントしてあげた防具を早速使ってくれているんだね」
「はい、ルナさん! 本当にありがとうございました。お金が貯まったらお返ししますね」
俺の服装は食事処でも着ていた市場の古着屋で購入した服の上に胸当てを付けている。もちろん立派な防具を購入するお金なんてないのだが、仮にルナさんたちのパーティへ入ることになった時にプレゼントされた。
……うん、貢物をもらっているオタサーの姫とかって、こういう気分なんだろうな。
「ああ~安物だし、気にしないでいいよ。それよりもトオルが仮にでも私たちのパーティに入ってくれて嬉しいよ!」
「そうそう、うちのパーティには回復魔法を使える人がいなかったからさ。それにこんなに可愛い男の子がうちのパーティに入ってくれるだけで、俺たちのやる気が段違いだ!」
「か、可愛いだなんて!? 俺のほうこそ、格好良くて強いみなさんのパーティに入れてもらえて嬉しいです!」
「いやあ~そんなことねえって!」
……なんだろう、この世界の女性に好かれそうな言動を取っているのだが、自分でやっていてジンマシンが出てきそうだ。クネクネしていながらぶりっ子していて、めちゃくちゃキモい気がする……
「ちくしょう! なんて羨ましいやつらだ!」
「黒髪の可愛い男が一緒のパーティだなんて許せん、爆発しろ!」
「………………」
うん……どうやらこれでいいらしい。周りの冒険者たちはルナさんたちに嫉妬の視線をこれでもかと浴びせている。確かに周りを見回しても男の冒険者は1〜2人しかいないし、男性冒険者が同じパーティにいるだけでもかなり羨ましがられるようだ。
「あいつらCランク冒険者パーティだろ。ちぇっ、やっぱりつええ冒険者には男も寄ってくるんだな……それにあのパーティーリーダーのルナってやつは、この街の領主の親族だって話だぜ!」
ちなみにルナさんたちはCランク冒険者になる。このオリオーの街だと、Cランク冒険者は相当な腕前となるらしい。パーティに入れてくれると言ってくれた女性冒険者の中で最もランクが高く、人も良さそうな彼女たちのパーティに入ることになった。
ルナさんがこの街の領主の親族であることは初めて知ったな。道理で武器や防具を簡単にポンポンとプレゼントしてくれるわけだ。
昨日の自由時間の午前中にすでに冒険者の登録は済ませてある。俺は登録したてのFランク冒険者だ。この世界の冒険者の登録には特に試験など必要なく、誰でも冒険者になることができる。ただし、魔物などの討伐依頼には相応の実力がないと許可は下りず、最初は採取や街の中でおこなう簡単な依頼から始めることが普通らしい。
まあ男の俺が冒険者登録をしようとしたら、受付の人にはかなりマジ気味で止められたけどな。やはりお金を稼げるが危険も多い冒険者という職業は男がなるものではないようだ。
「それじゃあ今日はどの依頼にする? 新人冒険者がソロで受けるなら簡単な依頼にするのが普通だけれど、Cランク冒険者の私たちがついているから、簡単な魔物の討伐依頼なら許可ができると思うぞ」
「本当ですか。それなら討伐依頼のほうでお願いしたいです」
当然ながら危険のある分、採取依頼よりも魔物の討伐依頼のほうが報酬やランクを上げるためのギルドからの評価は高い。まずは王都へ行くための旅費を稼がないとな。さすがにCランク冒険者のみんながいれば、簡単な魔物なら大丈夫だろう。
「となると、ここは初心者が初めに受けるのはゴブリンかスライムが定番だな。大抵の冒険者は命の危険がまったくないスライムを選ぶんだけど……」
「それじゃあ、スライムにしましょうか」
「あ、いや……とはいえ、スライムはちょっと……」
「えっ?」
なぜだろう。命の危険がないのなら、ここはスライム一択だと思うんだけれど。
「おい、あいつら男と一緒にスライムの討伐に行く気だぞ!」
「なに! さすがにそれは羨まけしからんぞ! スライムといえば人体に害はないが服を溶かす粘液を吐く魔物じゃないか!」
……ああ、そういうことね。ルナさんが言い淀んでいたわけが分かった。
漫画やアニメとかで、服が溶けてしまうようなラッキースケベが起きるかもしれないというわけだ。……いやまあその対象は男の俺なんだけれどね。
「スライムでも大丈夫ですよ。俺は討伐依頼が初めてなので、安全なほうが嬉しいですから。それにCランク冒険者のみなさんがついてきてくれればへっちゃらですよ!」
「トオル……わかったよ。だけど安心してくれ! トオルはこの私が絶対に守ってみせるから!」
「てめ、抜け駆けすんなよ! トオルを守るのはこの俺だ!」
「いや、俺だね!」
「………………」
うわあ……なんか今最高に殿プレイをしているわ~女性を手玉に取ってるわ~
この世界ではこういうのを
それにしてもこの世界の女性は男性に甘すぎる。確かにこの世界なら、俺でもモテモテになってハーレムを築き上げることができそうだ。
くそっ、早くこの最悪の呪いを解いて、女の子とイチャイチャしたいのに!
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