第11話 教会


「ここがこの街にある教会か」


 次の日にやってきたのはこの街にある教会だ。白くて大きな教会が街の中心地にそびえ建っている。


 昨日は俺の呪いについてを調べたり、お客さんたちから魔法や魔法について情報収集した。この世界には呪いやそれを解くことのできる浄化魔法が存在するらしい。俺が使える回復魔法もあり、浄化や治療は教会にて有料でおこなわれている。


 ちなみに俺は3日分の給料であるお金しか持っていないから、おそらく浄化魔法をかけてもらうのには足りないと思う。今回はそもそも呪いの解除ができるのかという確認と、俺も回復魔法が使えるため、回復魔法について詳しく教えてもらいにやってきたわけだ。


「こんにちは。本日はどのような御用でしょうか?」


 教会へ入ると、白い修道士の服を着た若い男性が受付に立っていた。


「こちらでは浄化魔法を使っていただけると聞いたのですが、どれくらいの費用が掛かるのかお聞きしたいのと、俺にかけられた呪いの浄化が可能か確かめてもらうことはできますか?」


「呪いの浄化ですか……なるほど、お若くてお美しい男性ですから、同性からの恨みか何かですかね。詳細につきましては浄化魔法が使える者が確認しますので、あちらでしばらくお待ちください」


「あっ、はい……」


 そういうわけではないのだが、さすがにこの世界に来るとき、クソ女神から勝手に呪われたとは言えない。受付の男性に指示された場所で順番を待つことになった。


 順番を待っている間、右側で回復魔法を使って怪我人を治療している人が見えた。どうやら回復魔法と浄化魔法は別の担当になるらしい。


「ヒール! ……どうですか? 他に痛い場所はありませんか?」


「いやあ、ブラザーの回復魔法で怪我がすっかり治ったよ!」


「怪我が治ってなによりです」


「………………」


 白い修道服を着た男性が回復魔法を使って冒険者と思われる格好をした女性の右手の怪我を回復魔法で治療していた。俺が回復魔法を使った時と同じように、怪我が緑色の光に包まれて、ゆっくりと傷が塞がっていった。


 それはいいんだけれど、この世界では修道服を着た男性のことをブラザーって呼ぶのか……


 いや、シスターの逆になるからブラザーでもわからなくはないけれど、違和感しかないぞ……


「次の方、こちらへどうぞ」


「はい」


 どうやら俺の番が来たようだ。俺の目の前には白い修道服を着た20代後半くらいの女性シスターがいる。やはり教会にいる人の割合的には女性のほうが多いみたいだな。受付にイケメンの男性を置いたのは女性客を集めるためなのだろう。


「本日は呪いの浄化と聞いておりましたが、何らかの物に対してかけられた呪いでしょうか?」


 目の前の女性は金髪で碧い目をした綺麗な女性だ。やっぱりシスターの服だと、金髪の外国人のほうが似合っている。コスプレなんかじゃなく、リアルなシスターさんだもんね!


「いえ、物ではなくて俺自身にかけられた呪いです。ちょっと特殊で、ある一定の条件を満たすと頭痛がするような呪いなんです。この呪いが解けるのか教えてほしいのと、もし可能ならいくら必要なのか教えてください」


「……そんな呪いは聞いたことがありませんね。少し見てみますので、両手をこちらに」


「はい」


 シスターさんに言われたとおり、両手をシスターさんの前に置く。するとシスターさんは俺の両手を女性特有の柔らかな両手で包み込んだ。


 ……いかんいかん! 向こうは医療行為で手を握ってくれているだけだからな! 変な気は起こすんじゃないぞ、マイサン!


「……んな! こ、この呪いは!?」


「えっ、どうかしましたか!?」


 なぜかシスターさんが急に後ろへ飛びのいた。そしてなぜかものすごく怯えた顔でこちらを見ている。


「た、確かにあなたは呪われているようです。それもとてつもなく強力な呪いのようです! とてもではありませんが、私では……いえ、少なくともこの教会にいる者では浄化できないでないと思われます!」


「マジですか……」


 なんてこった……予想はしていたが、どうやらこの呪いはかなり強力らしい。ちょっと待ってくれ、もしもこの呪いを解くことができないのなら、俺にはもう絶望しかないんだけど……


「えっと、すみません。俺は呪いには詳しくないんですけれど、この呪いは浄化できないのですか?」


「い、いえ。とても強力な呪いですが、浄化できない呪いは存在しないはずです。とてつもない浄化魔法の使い手か、浄化能力を持つ伝説級の魔道具でしたらなんとかなるかもしれません」


「本当ですか!」


「……そうですね、王都にいる教会のトップである教皇様でしたら、この呪いを浄化できるかもしれません。いえ、きっとできます!」


 この呪いを浄化できる可能性が存在する! 今の俺にとってはその事実が存在するだけでも希望が持てる!


「ですが、教皇様はとてもお忙しい身なので、一般人の方のために浄化魔法を使うのことはないかと……」


「ですよねえ……」


 まあ、そうなるわな……


 教会のトップがそう簡単に一般人の治療なんかしてくれるわけがないか。とはいえ、今の俺にすがる者はそれしかない!


 よし、とりあえず教皇様にどうやって治療してもらうかはあとで考えるとして、まずは王都を目指すことにしよう。でも王都までのどれくらい距離があるのだろうか。それにお金もかなりいるんだろうな……


「ちなみに俺は回復魔法が使えるんですけれど、この教会で雇ってもらったりできないですかね?」


 回復魔法が使える人は結構な高給取りだと聞いている。教会でお金を稼いで王都までの旅費を稼ぎたい。


「す、すみません、さすがにこれほど強力な呪いを持っている方はちょっと……」


「ですよねえ……」


 まあ普通に考えて、呪いを持っている人を教会が雇えるわけないよね!


 浄化をする側である教会の人たちがこの呪いを浄化できないと言っているようなものだからな……


 とりあえず呪いは解けなかったが、少しだけ希望は持てた。絶対にこの呪いを解いて、この最高の世界でハーレムを築いてやるぞ!

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