第113話:これからの約束
「えっ!? いまっ!?」
軽くというか、がっつりテンパってしまったナナは驚きのあまり変なところから声が出てしまった。
(え、、まじかまじか…。やっぱ、ラブホという場所だから…? てかっ、イツキってこんなに積極的だったけ…? どうしよ、、さすがにまだ心の準備ができてないって……。)
ナナの脳内はわずか数秒の間に色々な考えが巡りに巡った。
「…だ、だから、その、、エロいのはダメだって……。」
「い、いや、エロくはないですよ。笑」
「えっ?」
「…えっと。年末に"オールナイト"しませんか?」
「だから、エロいじゃんっ!!」
「違いますよ!笑 年越しのパチンコオールナイトですよ! 三重県の!」
普段は全国的にだいたい22:40前後が閉店時間と決まっているパチンコ業界だが、年に一度12月31日から元旦にかけて三重県のみでオールナイトというイベントが行われる。
文字通り、夜通しお店が空いており、1日中パチンコを楽しむことができるのだ。もちろん、パチンコを打ちながら年を越すのも可能だ。
パチンカーであれば、人生に一度くらいはこのイベントに参加したいと思うものであり、全国からパチンコ好きや界隈の有名人が集まる。ゆえに、当日の人の多さはすさまじく、まさにパチンコのお祭りといった様相を呈す。
まだ当祭りに参加したことないイツキであったが、自分の将来について整理ができたこのタイミングで、ぜひ行ってみたいと思ったのだった。
「なーんだっ! 三重県の年越しオールナイトかっ! 変なタイミングで言うから、びびったじゃんっ!」
「え、あ、すみません…。」
「いくっ!! わたしもいつか行ってみたいと思ってたっ! 今年の年末はちょうど暇だし、三重行っちゃおっ!!」
「はい! ありがとうございます!」
「うわーっ! オールナイトかっ! 一晩中ずっとパチンコでしょ!? うけるっ!! てかっ、体力と財力、持つかな…。 でも、なんにせよ、まじでいまから楽しみっ!」
「ですねですね! 詳細はまた後日決めましょう!」
イツキはずっと行きたかったオールナイトへの参戦が決まっただけでなく、ナナと行けることが確定し、これ以上ないくらい大満足だった。同時に、色々ありすぎた今日の疲れがどっと押し寄せてきたのか、急激な眠気にも襲われた。
しばらくして、ナナがベッドの中でもぞもぞと動いてから、静かに口を開いた。
「……わたしさー、春くらいだったかな、、ふと考えてたんだよね。心から好きな人に出会う確率って、どのくらいなんだろうって。1/600万くらいかなーとか。果たして、わたしはその1を生きているうちに引けるのかなーとか。うけるでしょっ!?笑」
「……」
「そんな確率なんてなんのあてにもならないし、そもそも、そんなもの存在しないかもしれないのにね。でもね、わりと本気で考えちゃうんだよねー。でね、思ったの。心から好きな人に出会う確率は、人と人との確率だから、日々変動してるんだろうなって。あ、これも確変だ!って。元々、心から好きな人なんて多分いないんだよね。一緒の時間を共にしたり、丁寧に向き合っている中で、きっと誰かを心から好きになってゆくのかな。だから、ある時は1/1000万かもしれないし、またある時は1/100くらいかもしれない。まぁ、なんにせよね。わたしはいま、その1を引けそうな気がするんだっ!」
「…………」
「イツキ? イツキーっ?」
「…………」
「ちょっ、寝るのはやーっ! 自分だけ、誘うだけ誘っておいてさっ。」
「…………」
「ばかっ…//」
ナナは恥ずかしそうに布団をかぶって、わずかに灯っていた部屋のライトを落とした。枕元に設置されている時計の明かりだけが最後にうっすらと光ってすぐに消えた。
ナナが最後に横目で時刻を確認すると、ちょうど3:33だった。
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