第86話:ごめん…
この2人に一体があったのだろうと思いながら、イツキはナナと江奈の握手をそばで見守った。
「ナナさん!」
握手が終わると、江奈がいつもよりワントーン明るい声で口を開いた。
「また今度、もう一度やりましょ!」
江奈はナナにも負けず劣らずの笑顔だった。
「えっ! いいの!? 素で嬉しいんですけどっ! やるやるっ! もうすぐゼミの合宿だから、帰ってきたらまたやろっ!!」
「はい! そうしましょ!」
「てかっ! プールの時から思ってたけど、江奈ちゃんって服とかネイルとか、いっつもまじで可愛いよねっ! 特にそのネイルとか、憧れるレベルなんだけど! どこでやってんのっ!?」
「ナナさんに褒められるのは嬉しいです! えっと、このネイルはですね、、」
朝の微妙な雰囲気は気のせいだったのかなぁとイツキは少し疑問を持ちながらも、この2人の仲が少しづつ深まってゆくことはなんだか嬉しかった。
もはやイツキが気づいたころには、すでに入る余地のないガールズトークまで開催されていた。まぁ、これはこれでいいか!と思いながら、2人の後に続くようにパチンコ屋を出た。
その時だった。楽しそうに話していたナナが瞬間冷却したかのようにカチッと固まった。
「彩乃、、麻呂、、。」
「え、ナナっ?!」
なんというタイミングだろう。3人がちょうどパチンコ屋から出たところに、彩乃と麻呂が通りがかった。彩乃と麻呂は、驚いた顔をしながら、ナナが出てきたパチンコ屋さんを眺めた。
ナナは急に鼓動が速くなるのがわかった。
「パチンコやる人、嫌なんだよね。」
元彼に言われた別れの言葉がナナの脳内にフラッシュバックする。
前もって心の準備をする時間があれば、ナナも何かいい反応ができたかもしれない。しかし、急遽訪れたこの状況にさすがのナナもどうしたらいいかわからなかった。
「…………ごめん。」
ナナはイツキと江奈に向かって小さくそう呟くと、駅の方に走り出した。
「ナナさん!!」
イツキと江奈が後ろから声をかけるも、ナナの走る速度が落ちることはなかった。彩乃と麻呂も含め、残された4人は何もすることができず、小さくなってゆくナナの後ろ姿をただ見ているしかなかった。
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