第83話:虎視眈々
その光景を見たナナは"すごく舐められてるっ……。"と思った。わたしはこんなに緊張しながら打ってたのに……、とナナは思わず悲しくなった。
一方で、"それにしてもおかしい……"というひっかかりがあった。ナナはできる限りの想像力を要し、江奈の気持ちを慮った。
(たとえ、わたしのことを舐めていたとしても、、江奈ちゃんがパチンコ・スロットの勝負でそんなことするわけないっ。それに、勝負の言い出しっぺは江奈ちゃん…。江奈ちゃんだって絶対に勝ちたいはず…。勝ちたいと思う江奈ちゃんは何をするだろうか……。江奈ちゃんの得意なスタイルはハイエナで……。あっ!! もしかして…!!)
ナナはハッとした。
(わたしがいつもの"森物語"で勝負しているように、江奈ちゃんは江奈ちゃんの得意な"ハイエナ戦法"で勝負する気なんだ。朝一から闇雲にスロットを打った場合、無駄にマイナスを出してしまう可能性がある。差枚数勝負においてそれは致命的。だから、極力マイナスを出さないために午前の時間帯はあえて打たず、この休憩室から
そう思うと、さっきまで休憩室でのんびりと構えているように見えた江奈が、ライオンたちが美味しい肉を残して去るのを遠くの茂みから目を光らせて待っているように見えた。
ナナは額や手にじわーっと変な汗を感じた。"江奈ちゃんはわたしのことを舐めてなんかいない。むしろ、本気なんだ。わたしがこうして相手を気にしている間も江奈ちゃんは虎視眈々と好機を伺っているんだ。"そう思うと、ナナは焦る一方で、江奈に本気で相手してもらえていることが嬉しくてたまらなかった。
ナナは"こうしちゃいられないっ!わたしも負けないっ!"と急いでパチンココーナーに戻り、自分の台を再度打ち始めた。打ちながら、休憩室に江奈がいたこと、そして自分の推察をイツキに話すと、イツキもナナの考えに同意見だった。
そして、2人の予想通り、江奈は漫画を読みながらも30分に1回ほどスロットコーナーを銀髪をなびかせながら巡っており、午前中が終わるころには、すでにいくつかの台にあたりをつけ始めていた。
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