第82話:飛ばすナナ。沈黙のエナ。

 "555"でラッシュ(確変)確定当たりだったため、朝一から大量出玉に期待ができるナナ。本人の言葉通り、波に乗ったラッシュ(確変)は連チャンが止まらず、ナナは順調に当たりを積み重ねていった。


「やばいっ! また当たったんですけどっ! なになに、こわいこわいっ! 今日のわたしどしたっ!笑」


 ナナが"もちぐま"ぬいぐるみの頭を撫でる前に次の当たりを引いてしまうのだから、絶好調極まりない。"森物語"を打っている他の人たちもナナの朝一爆進撃を振り返っては羨ましそうに眺めていた。美人なので、ただでさえ目立つのだが、ここに当たり連発を重ねているので、注目されるのも無理はなかった。


 気づけば、8連を数え、開始直後から1万発オーバーの持ち玉を獲得した。投資も浅かったため、差枚数で考えても大きくプラスの状況だ。


「今日のナナさんは持ってますね!」


 イツキもナナのスタートダッシュを横で楽しんでいた。結果的にナナのラッシュは8連で終了したものの、好スタート、いや、最高のスタートを切ることに成功したのであった。


 ラッシュがひと段落したところで、ナナは江奈の様子が気になった。性質上、スロットの方が出玉のスピードが遅いため、仮に江奈がどんなに当てていたとしても、現状は勝っているだろう。


 今なら、少し心に余裕のある状態で江奈の様子を見ることができる。そう考えたナナは早速台を休憩中に切り替えると、江奈がいるであろう2階のスロットコーナーへと向かった。


 基本的にパチンコは朝一に打つメリットがあまりないが、スロットはそうではない。スロットは設定狙いや設定変更後に生じる恩恵が一部あるので、朝一から打つメリットがあるのだ。そのため、パチンココーナーに比べ賑わっており、すでに空き台の方が少ないほどだった。


 その中で、ナナは目立つ銀髪を探して歩いた。新台コーナー、準新台コーナーと目を走らせながら歩くも、江奈らしき人が見当たらない。大量設置の"ジャグリング"のコーナーにもいなければ、前回ナナがイツキと戦った"ドキドキ!"のある沖スロコーナーにもいない。


 はて?まさか江奈ちゃんもパチンコ…?そう思ったナナがスロットコーナーを後にしようとした時、ふと休憩所に目をやった。すると、そこには絶賛勝負中であるはずの江奈がいた。


 ナナが見たところ、江奈はちょっと休憩所に飲み物を買いに寄ったというわけではなさそうだった。というのも、江奈は休憩所に置いてあるふかふかのイスにゆったりと座り、のんびりとスマホで見ているのだ。しかも、ちらっとスマホの画面を見るに、どうも漫画でも読んでいるらしかった。

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