第17話

「私は、この病院の院長です」

「ええっ?!」

「買い物の帰りに、倒れてしまって…」

 院長は「困ったなぁ」と苦笑した。私は、院長の目を静かに見据みすえ、

「……がん、ですよね」

 と呟いた。院長の顔がこわばる。

「しかも…の」

 一度息を飲む音が聞こえた後、柔らかい微笑みに戻って頷いた。

「そうか、処方箋しょほうせんを見られてしまったんだね」

「すみません、院長が倒れているのを見つけた時、鞄からはみ出す袋が見えてしまって……」

「いいや、謝らなければいけないのは私の方です。助けて頂いた上、ここまで連れてきて頂いて。……私にはもう、時間が無いんです」

 ああ、どうしよう。私には、何が出来るんだ……。

「ここらは病院が少ない。だが、この病院には私しかいないんだ。……そうだ!」

 院長の声に、俯いていた顔を上げる。

「あ、えっと…あのお名前は?」

花画はなが医名いなです」

花画はながさん、ここで働きませんか?」

「っ___!!え、あっ、ほ、ほんとうですか…!?」

 驚きのあまり、言葉が詰まった。

「こちらこそ、お願いしてもよろしいですか?」

 院長の笑顔が、輝いて見えるっ…!!

「はいっ!喜んで!!」

 私は力強く頷いた。

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