第14話

花画はながっ!!」

 病院に入った途端、ものすごい剣幕けんまくの院長が現れた。

 驚きと嫌な予感に、足が一歩後ずさる。

「なあっ___」

「院長!……ここでは」

 今にも怒鳴り出しそうな院長を、隣で立つ副院長が制する。わかりやすく周りに視線を彷徨さまよわせる副院長の様子を見て、院長は大きく咳払いをした。病院の入口で突然の揉め事かと、受診者の人達が興味深そうにこちらを見ている。

「院長室に来なさい」



「前の治療したら、クビだって言ったよね」

 眉間に寄せられたしわが闇をまとい、一層深く見える。

 溢れ出る唾を飲み込み、にじみ出る手汗を握り込む。

「…それでも、いいです。クビになってでも、私は患者さんを助けます!!」

 負けじと眉間に皺を寄せ、力強く睨みつけた。それに院長は小さく息を飲んだ。

「では」

 軽く腰を曲げて頭を下げ、素早く院長室を後にした。



「どうでし、た?」

 私の重たい顔付きにあらかた起きた事を察しながらも、かいは不安気に尋ねる。

「…クビ」

「ええっ?!ど、どうするんですか!?そう言われたんですか?」

「以前忠告は受けた。それでも続けたんだ……わかってた、ことだよ」

「そっ、そんな……」

 瞳を濡らすかいを前に、この子だけは何があっても守らなければならないと思った。

 ……私がどうなろうと、かいだけは__

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る