第11話

「初めまして」

 留花るかちゃんの昨日とは明らかに違うその様子に、私は呆気にとられてしまった。

「…え」

 立ち尽くすかいの口から零れた言葉を横耳で捉える。

留花るかちゃーん、朝ご飯の時間だよ〜」

 すると、後ろからご飯を運んだ看護師がやって来た。私は昨日の光景を思い出し、身構えたのだが__

「わ〜美味しそう!」

 留花るかちゃんは笑顔を見せた。

「あ、医名いな先生」

 看護師が私に会釈えしゃくをする。

「あの、これはどういう…?」

 訳が分からず訊ねたのだが、看護師は柔らかく首を傾げ、

「それが、私にもわからないんです」

 と、失礼しますと行ってしまった。

 私はかいを連れて病室の外に出る。

医名いなさん!これはどういうっ__」

 取り乱すかいてのひらで制し、顔を上げた。

「もしかしたらこれは、ただの笑幸しょうこう伝染病じゃないのかもしれない」




 私は、むさっくるしい資料室の中にいた。ここには、様々な病気についての資料が敷き詰められている。滅多に使われることの無いため、ほこりとカビの臭いが鼻につく。

「確か、どこかで見た気がする」

 私はその中でも、『笑幸しょうこう伝染病』という棚にあるファイルたちをあさっていた。

「ん?」

 ページをめくる手が止まる。

笑幸しょうこう伝染病と同じく顔が引きる。一週間経っても悪化しない。ケースによっては言葉を発する。笑幸伝染病患者に見られる異変がない。最近起きたこと、人を

 文字をなぞる指を口元に移動させる。

「その病名は___」

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