第10話

 それから、留花るかちゃんの検査が始まった。

 右頬をさする彼女を前に、注射を手にする。

「チクッとしまーす」

 血管に針が入った途端、

「痛い!!」

 留花るかちゃんは足を大きくバタつかせ、ベッドを激しくきしませた。

「はい、もう大丈夫だよ」

 かいは鼻をすする留花るかちゃんの肩に手を添えて、

「よく頑張ったね」

 と微笑みかけた。


 血液検査の結果、笑幸しょうこう伝染病患者であれば見られる異変がなかった。

「何も、異常はないですね」

 検査結果を見たかいも首を傾げた。

「一体何が…」


 留花るかちゃんの検診の為、廊下を歩いていた時。

「嫌だ!!こんなの、食べたくないっ」

 お皿が落ちる音と留花るかちゃんの叫び声が聞こえ、慌てて病室に駆けつける。

留花るかちゃん!」

 床には、まだ手をつけていないだろう料理と逆さまになったお皿が転がっていた。

留花るかちゃん、どうしたの?」

 真っ先に留花るかちゃんの元に駆け寄ったかいが尋ねると、

留花るか、怖いよ。顔、変だし、こんなんじゃ学校に行けないっ……」

 と、涙を零した。彼女はまだ、小学二年生だった。


 留花るかちゃんの気持ちを考慮し、検診は後ほど行うことになった。

「病院生活が、かなりのストレスになっていたんですね」

 かいが俯く。私は力強く拳を握りしめ、

「まだ幼い命を死なせる訳にはいかない!」

 と決意した。


 ___次の日

 コン コン

「はーい」

 ノックをすると可愛らしい声が聞こえた。

「おはよう、留花るかちゃん」

「おはよう!」

 私に続き、かいも挨拶を交わす。すると留花るかちゃんは、眉間にしわを寄せ、首を傾げた。

「えっ、と……

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