第8話
その後、クローズアップトレーニングを説明し、家族の協力のもと治療が始まった。
「そんな…」
「……どうして」
治療開始から約一週間が経過した。しかし、彼からは何の変化も見られなかった。
「どうしてくれるんですか!!」
「もうやめないか」
興奮する妻を、夫が必死で抑える。
「本当に、申し訳ありません」
必死に、頭を下げ続ける。
「最初に難しいと言われていたじゃないか」
「最初から駄目だと言われた方がよかったのよ!!…息子は、息子はっ」
「申し訳ありません」
「クローズ……なんちゃらだっけ」
院長室の無駄に大きな椅子に座った院長が呟く。
「クローズアップトレーニングです」
「それそれ。それさ、中止」
「っ……!?」
言葉にならない声が出た。
「やめてくれないかな、患者に下手な期待持たせるの。先生たちの間からも苦情きてるんだよ」
医者たちの憎らしい顔が頭をよぎる。
「訴えられたりでもしたらどうするの?面倒事はおこさないでくれるかな」
重たい圧が、私にのしかかる。
「次やったらどうなるか…わかるよね?」
「……はい」
私は、自分の足元を見つめることしかできなかった。
病院の屋上に設置されているテラスで、そよ風に髪がなびく。
「……あの、
背後から不安気な声が聞こえた。
「このままだと、クビ」
私は後ろを振り返ることなく、呟いた。
「でも、諦める訳にはいかないっ」
勢いよく振り向いた先には、夕日に照らされる
「そうですよね」
「この治療法で、
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