第3話

 次の日


「あのー、医名いなさん。また笑幸しょうこう伝染病の方です」

 頬を引きって気まづそうな顔をした、一つ結びの女の子が顔を出した。

「えっ、また?!…ちょっと行ってくる。」

「ちょっ!」

 かいの慌てる姿を横目に、私は医者たちの所に押しかけた。

「わざとですか?」

 目の前での雑談が止まり、「あ」というような顔をして私を見た。

「何故私に多くの笑幸しょうこう伝染病患者を押し付けるんですか」

「押し付けるってそんな」

「違うんですか?連日、私がた患者はほとんどが笑幸しょうこう伝染病でした。」

 すると、一人の医者が口を開いた。

「俺だって、一人はやったよ、一人は」

「……一人?」

 私は証拠となる数十枚の診察書を机に叩きつけた。

 それを見た医者たちは長い沈黙の後、

「えー、だって嫌じゃん。笑幸しょうこう伝染病の人診るの」

 と、本音を零した。

「最低ですね」

「なっ」

 顔を歪めた医者たちを更に追及ついきゅうしようとすると、突然腕を掴まれた。

「ちょっと医名いなさん!何してるんですかっ!!」

「何って___」

「患者さん待たせてますよ!失礼しました〜」

 猫なで声を出しながら部屋を出たかいの手を振り払い、

「何してるの?」

 と問い詰めると、

「それはこっちの台詞せりふです!!」

 と、逆上された。

「なんで先輩の先生たちとうまくやれないんですか!上の人との関係が崩れたら、色々とやりにくくなるのは医名いなさんでしょ!?」

容告ようつ かい』と書かれた名札が大きく揺れる。

「ぐっ……」

 この子は私の担当看護士で、可愛らしい顔の割にははっきりと物を言える子だ。

「ごもっとも、です」

「早く患者さんの所に行きますよ!!」

 かいは再び私の腕を掴み、乱暴に廊下を進んで行った。

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