第17話 ペン子、初めて知る
今まで我慢していた疑問の数々を、ペン子の前に歩み寄ったアヴェンスは次々とぶつけてくる。
「君は一体、どこから来たんだ? どうしてこんなところにいたんだ? それから……」
「隊長、ストップ」
「ごふっ!」
そんな矢継ぎ早に質問攻めをする彼の脇腹を、立ち上がったフィエナは肘で小突いた。
想定外の攻撃に、アヴェンスは一瞬たじろぎ硬直する。
「そのように不躾に質問するのは、失礼ですわ。私たち、ロクにご挨拶も出来ていないんですよ? まずは自己紹介をするのが礼儀ではありませんか?」
「まあ……言われてみれば、確かに」
ペン子としても、その点は納得だった。
クラーケンを撃退した英雄として迎えられたペン子だったが、昨日はフィエナの治療やら舟艇の修復やらで皆多忙そうだったため、船室に案内されたっきり、聞けずじまい。
船を散策することぐらいしかやることがなかったため、互いの名前ぐらいしか把握出来ていないまま、今に至っていた。
「でも、寝間着姿でご挨拶というのもどうかとは思いま……いっって!」
何やら不満そうに呟くアヴェンスの足に、フィエナが鉄槌の踏みつけを下す。
そして何事もなかったかのように、柔和な笑顔で、ペン子に語り掛けてきた。
「改めまして、ペン子様。この度は危ないところを助けていただき、本当にありがとうございました。また、名乗るのが遅くなったご無礼をどうかお許しください」
「ううん、気にしないでよ。私が見過ごせなかっただけだもん。それに、名前ならもう知ってるよ! あなたがフィエナで、こっちがアヴェンスだよね!」
聞き心地の良い澄んだ声と共に、深々と頭を下げるフィエナに対して、ペン子は、二人を順番に指をさして確認する。
「はい。私はルミリア王国の第一王女、フィエナ・フォン・ルーミリアと申します。一国の王女として、心よりお礼を申し上げますわ」
「えっ、フィエナって王女様だったの!」
「……それは昨日、船室を案内した時に教えただろ……」
「あれ、そうだったかな? ごめん、あんまり覚えてないやっ」
「こいつ……」
あっけらかんに答えるペン子に、アヴェンスは呆れた声を漏らす。
初めて乗る船に興味津々だったせいで、無意識に彼の話を聞き流してしまっていたようだ。
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