第18話 ペン子、絆が生まれる

「確かに言われてみれば、そんな感じ……かも?」


 柔らかそうな金髪に、大人びた雰囲気をたたえた緋色の美しい瞳。

 ピンッと伸ばされた背筋。

 堂々と、それでいてゆったりとした綺麗な足捌あしさばき。

 身を包む寝間着こそファンシーであるものの、その洗礼された所作からは、王家の威厳というものを感じる。


「ということで、今度からフィエナ様と呼ぶようにするんだな。じゃないと、国王に何されるか堪ったもんじゃないぞ?」

「あ、そっか。私、誰に対してもこんな感じで話すから、気が付かなかったよ! ごめんね、フィエナ……じゃなかった、フィエナ様!」


 脅かすように言うアヴェンスの言葉に、慌てて敬称を付けるペン子。

 誰に対しても分け隔てなく接するが故に、普段から敬語を使う機会がほとんどなかったため、すっかり頭から抜けていたのだ。


「そんな、とんでもありませんわ。あなたは私の命の恩人。私のことは今までどおり、気軽にフィエナとお呼びくださいませ」


 そんなたどたどしいペン子に対して、フィエナは落ち着いた口調で話しかけてくる。


「え、でも……」

「こうして出会えたのも何かの縁。折角こうしてお話出来る間柄になったのですから、様付け呼ばわりされるとなんだか寂しいですわ。だから、ね?」

「……そっか! 良かった、そっちの方が呼びやすいから助かるよ! よろしくねっ、フィエナ!」

「よろしくお願いしますわ、ペン子様」


 そう言いながら、自然と笑みを交わし合う二人。

 交わした会話は決して多くはなかったが、そこには確かな絆が生まれていた。


「……ま、いいか。じゃあ、次は俺の番かな」


 そんな微笑ましい二人のやり取りを見ながら、アヴェンスは頭をポリポリとかきながら呟く。


「俺はアヴェンス・ル・グランフォードだ。昨日も軽く説明はしたが、ルミリア王国の騎士で、今回の遠征隊の隊長を務めている。ま、よろしくな」


 そう軽く挨拶しながら、アヴェンスは揃えた二本指をピッとおでこから離す。

 長い蒼髪を後ろでくくり、意志の強そうな切れ長の青い瞳に、均整の取れた容貌。

 他の兵士は鎧を身に纏っているにも関わらず、彼の場合は極力鎧部をそぎ落とし、動きやすさを重視しているように見える。

 気さくそうな印象を受けたが、どこかペン子の様子を伺い、監視するかのような目で見られている気もした。


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