1 目覚め
「はぁ、はぁ...」首を切られるのは何度切られても慣れない。慣れたくもないが。
今日はいつもと変わらなければ8歳の誕生日を迎えて5日がたったころのはずである。
昔は首を切られる恐怖で起きたとたんに号泣し、メイドや父様、母様に心配されたものだ。
「リシー、いる?」そうドアの外に向かって訪ねる。すると直ぐにドアのノック音が
聞こえ、「マーティス様?いかがいたしましたか?」と聞かれる。
「すまない、水を一杯持ってきてくれない?」
「かしこまりました。」
そこから少ししてからもう一度ノックの音がして
「失礼します。」という声と共にリシーが部屋に入ってくる。
「マーティス様!?どうして泣いてらっしゃるのですか?」
泣いてる?あぁ、そうか、リシーの顔を見て安心してしまったのか...
いくら慣れても死ぬのは心に来るな...
「いや、すまない...気にしなくていいよ。」
「気にしなくていいといわれても...」
リシーは俺にとって姉のような存在であった。もっとも、彼女の立場では俺のことを弟のようになどとは思っていないだろうが。
とはいえ心配するなと言っても気にはなるだろう。そう思い何と言おうか考えていたのだが
「分かりました。話したくなったらいつでも呼んでください。何時でお話し相手でも相談役にもなりますので」
「うん、ありがとう。」
「では、失礼します。」そういってリシーは出て行った。
ふぅ、また一から力を手に入れなくては...
理不尽な死に抗うためにも。
悪役は世界を変える @farna
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