第16話 味方だよ。

5限目の授業が終わり、加藤が教室を出ていく。

葉月は加藤の後を追う。

「先生、相談があるんです」

「何だ?また恋愛相談か?」

「まあ、似たようなものですけど。」

「話て見ろよ。」

僕は職員室まで付き合う間、文月のこと。1年の裕斗のことを話した。

「お前ら恋愛ドラマのような青春してんな。」

驚きのあまり口を開いてる。最近の高校生ってすごいと染々感じているようだ。

「で、お前は今年が赤羽と初対面じゃなかったてことか?」


「はい。1年前、通院していたカウンセラーで彼に会ってるんです。」


僕はあの日のことを語っていく。


冬の日。

雪がシンシンとつもっている。

僕は母親と文月と近くのカウンセラーに通院していた。

そのカウンセラーは不登校や心の病を持ってる患者も通院していた。


室内は清潔感がある作り。穏やかなクラシック。

ただ、当時の僕は心配してくれる母や文月にも投げやりな態度を取っていた。


「葉月、お母さんは葉月が学校に行きたくなったら行けばいいと思うわ」

髪をショートにして、コートにマフラーの母。桜はキャリアウーマンだ。

「ここのカウンセラーは、先生がとてもいい人で有名なのよ?きっと葉月の助けに」

付き添ってくれた文月の言葉がすり抜けていく。


「二人は帰って、僕は一人で大丈夫だから」

生気を感じない瞳の葉月に桜も文月も眉を下げた。


その時室内にいたのが、母親とカウンセラーに来ていた当時、中3の赤羽裕斗であった。


診察を受ける為に部屋に入ると、30代の女の先生が僕の話を聞いてくれた。

「いじめなんて、ろくな奴じゃないわ。そんな奴は脳内で殺してやりなさい。」

セミロングをして白衣を来ている主治医の片山春は笑って話した。


僕は彼女の言葉に呆れた。

(カウンセラーだろう)


「僕は味方がいない。学校にも家にもー...」

ポツリと呟いた葉月。

「君は今日は誰かと来たの?」

春が診察をカルテに記入する。

「母親と幼なじみが」

「いるじゃん。味方が。ここまで付き添ってくれるって、このうえない味方だよ。」

ニコッと笑う春

僕は彼女の言葉に心の霧が晴れていくのを感じた。

「SNSはやってる?」

「特には」

「やってみるといいよ。共通の趣味から、話し相手が増える。

好きが増えると毎日が輝くから」


彼女の言葉でSNSのアカウントを作って、園芸部の後輩の奈歩ちゃんとSNS内で交流を持つようになった。


あのカウンセラーでの言葉は、僕にもう一度動きだすきっかけをくれたけど、彼にとっては違ったんだろう。


あの日、診察室をでた後に裕斗が取り乱す母親を抑え込む姿を目撃した。


葉月は瞼を閉じる。

「いいカウンセラーだな。その片山春さん」

加藤はポツリと呟く。

「はい。僕にとっては」

力強く答えた。

「それを赤羽に伝えてみろよ。言葉にしないと分かりあうのは難しいからな?」

加藤はニカッと笑って職員室に入っていった。

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