第15話 好きのオーラ

葉月と一緒に教室に入ると、真由ちゃんが駈け寄ってきた。

「おはよう。2人とも両親から裕斗君の家庭事情聞けたの。」

私は葉月と視線を合わせる。

『聞かせて!』


◇◇◇

午前中の授業が終わって昼休み。

私たちは教室でお昼を食べる。

お弁当のおかずを食べてる時、真由ちゃんが切りだした。

「裕斗君のお母さんはシングルマザーで、相手の人は妊娠に気が付くと姿を消した。親の反対を押しきっての結婚だったから、実家に頼ることが出来なかったの。それでも1人で働いて祐斗君を育ててた。

その頃は私の家にもよく遊びに来ていたわ。

だけど、私が中2の時、その会社が倒産してから、生活が荒れて複数の男の人と関係を持つようになっていったらしいの。」

真由の告白を聞いて私は眉を下げる。

「彼にそんなことがあったのね...」

祐斗にキスされる瞬間、母親に置いていかれた迷子の子どものような目をしていたのも納得した。

「彼は文月と母親を重ねていたってことかな?」

葉月は真由ちゃんに尋ねる。

「多分ね。お父さんの話では伯母さんも本が好きだったと話していたから。」


祐斗にmotherの本の感想を聞かせて欲しいと言われたことを思い出す文月。

「祐斗君も伯母さんのことで悩んでた時に、1年前くらいにカウンセラーに相談しに行ってた話も聞いたの。」

「カウンセラー?」

葉月は何かを思い出したようにハッとした表情をしている。

「どうしたの?葉月」

「文月、僕は前に彼に会ったことがある。」

「もしかして、1年前に行ったカウンセラーで?」

「うん。何で今まで忘れてたんだろう。」

葉月は眉間に皺を寄せて考えこむ。

「私が祐斗君に言ってあげるよ。葉月ちゃんは牧野君と付き合ってるんだから、手を出しちゃダメよって」

ニコッと笑顔を見せる真由に葉月も文月も顔を赤くする。

『何で知って!』

(私たちが付き合ってることは誰にも言ってないのに)

声が重なる二人にクスクスと笑う真由

「だって好きだってオーラが出てるもの」


◇◇◇

お昼休み終わりを告げるチャイムがキンコンカンコンと鳴り響く。

「葉月、今日は図書委員があるから私は彼に話をしてみるわ。」

ニコッと微笑む。

「私も文月ちゃんに付き添うわ。牧野君」

真由の言葉でも不安そうな顔の葉月。

「今日は園芸部の水やり当番だから、僕も終わったらすぐに図書室に行くよ。」

真剣な表情で伝えられて、思わず頬が赤くなる。

「葉月ありがとう」


そうこうしてる間に5限目の国語の担当教師、加藤がドアを開ける。

「授業始めるぞ。席につけよ」


この日、放課後の図書室でそれぞれの想いが交差する。



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