第13話 カスミソウの花言葉


私は葉月と一緒に都内の植物園へと向かった。

冷温室には様々な植物が植えられている。

葉月はキラキラした顔で、私に植物の説明をしてくる。

(私は葉月のこういう顔が好きなんだ。好きなことに夢中になる時のキラキラした顔が)

「ごめん、文月。僕ばかり喋って」

「ううん。もっと聞かせて。葉月の話」

葉月は歩きながら自分のことを話していく。


植物園には金木犀の香り。

「1年の時、いじめにあって不登校になった時、SNSで花写真の投稿を見たんだ。それはある姉妹が育てた植物で僕は元気をもらった。」

姉妹、もしかしてと私は思った。

「それが香取さん?」

葉月は目を丸くしたのち首を縦に振る。

私は思いきって尋ねてみた。


「葉月..香取さんのことどう想ってるの?」

「奈歩ちゃんのことは友人かな。妹のような感情かも。どうして?」

私は素直に薄情した。

「文芸部の後輩が言ってたの。葉月と香取さんが佐々木公園で抱き合ってたのを見たって」

葉月は慌てて否定した。

「あれは慰めてたんだ」

葉月によると香取さんは姉が亡くなっている。何年も植物状態で倒れる前に喧嘩をして家を飛び出してしまった。

その最中に倒れてしまった。

そのことを悔いてる彼女を慰めてたとのこと。

(優しいのよね。葉月)

「私ね、葉月が不登校になって何もできなかっとことに後悔していたの。寂しさから物語の世界に逃げたのもあるの...いつも隣にいた葉月に居場所が出来たのは嬉しいことなのに心のどこかで嫉妬してた。」


横を見ると白い花が咲いている。

「かわいい花」

心にかかえこんだものを言葉にしていくとリラックスしていく。

「文月..僕にとって君はカスミソウの花なんだ。」

「え?」


「カスミソウの花言葉は清らかな心、無邪気、幸福、感謝、親切。いつも隣に文月がいたから、僕はここまで来れたと思う。いつでも文月の幸福を祈りたい」

真っすぐに自分を見つめる葉月。

目に涙が浮かび視界が滲む。

「葉月..」

「もう一つ、英語では永遠の愛という花言葉があるんだ。」

頬をあからめて葉月は言葉にする。

「僕は文月に永遠の愛を誓うよ。恋人になってくれますか?」

私は一筋の涙を流すと、葉月の胸に飛び込んだ。

「はい」

葉月は文月を優しく抱き締める。

その後、優しく文月の唇に触れるだけのキスを交わした。



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