第11話 突然のキス

葉月は真由と一緒に上野まで行く。

「出ないか」

歯がゆそうな顔の葉月。

「文月ちゃんは図書館良く行くから、スマホは常にマナーモードなのよね」

真由の言葉に頷く葉月

「とりあえず園芸部の二人と合流してもいいかな。浅野さん」

「うん」

同意して二人は園芸部の奈歩と瑠偉が待つ場所まで迎った。


◇◇◇

喫茶店から出た文月と悠人。

銀杏並木を歩く二人。秋の匂いがする。

(休日に男女で歩く。周囲の人たちから見たら、私達は恋人のように見えるのだろうか。

物語のような恋に憧れてきたけど、私は気づいてしまったわ。あなたへの恋に)

心に葉月の笑顔が浮かぶ。

瞼を閉じる文月....

そして、赤羽君が私に向ける気持ちに気づかない程私は鈍くない。


「赤羽君!」

前を歩く祐斗は振り向く。

「文月さん..」

その表情は迷子の子どものようだった。

「今日は素敵なお店を紹介してくれて、ありがとう。

また、本が読みたくなったら放課後の図書室にいらっしゃい」


ここで分かれようと思って、背中を向けた瞬間に手首をパシッと掴まれる。


◇◇◇


「部長!」

奈歩と瑠偉がいたのは、本が読める喫茶店の傍である。その建物は昭和レトロの雰囲気を醸し出していた。

直感で文月が好きそうな場所と感じた。

「藤倉先輩たちはこの先にいます」

奈歩と瑠偉が指差しをする。


「教えてくれてありがとう。月島君、奈歩ちゃん。行こうか。浅野さん」

「うん」


二人の背中を見送る奈歩と瑠偉

「上手く行ってくれるといいな」

「行くさ。きっと」

奈歩が心配するように呟く。

安心させるように瑠偉は力強く答えた。


◇◇◇


「牧野君、園芸部の子たち。いい後輩だね。」

隣を走る真由の言葉に葉月は薄く微笑む。


「自慢の仲間だよ。」

葉月のキラキラした表情に真由は薄く頬を染めた。


正面に悠人と文月を見つけた二人.

「いた!文」


文月と声を出そうとした瞬間、僕は金縛りにあったかのように動きがとまった。


◇◇◇


祐斗に手首をパシッと掴まれた文月。


「赤羽君...?」

前髪で顔が隠れて見えない。

彼にグイッと引っ張られて、バランスを崩した私は彼の腕の中にスポッと収まる。


「ちょっ、何を」

その時に見えた彼の瞳に、私は一瞬戸惑ってしまう。

その隙に祐斗は瞼を閉じて、文月の唇にそっとキスをした。




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