第10話 物語のタイトルは
「ここです」
祐斗に連れてこられた場所は昭和レトロを醸し出している。
こじんまりとした喫茶店
温かみのあるチョコレート色の床。
チャリンとドアを開けると、店内はクラシックが流れてる。
置かれてる本棚を見る。
「あれは」
「ここは本を読める喫茶店なんですよ」
微笑む祐斗
文月は本棚に置かれてる古書は、大正や昭和の日初期に書かれた作品が並べてる。
(うわあ!!この本を読みたかったのよ)
頬を赤らめて嬉しそうに微笑む文月
クスクスと笑ってる声が聞こえる。
「文月さんをここに連れてきたかったんです。強引に連れてきて困った顔させてたから、嬉しそうな顔が見れて良かった」
その顔は少年のように純粋で、私の胸は微かな痛みを覚えた。
「赤羽君...」
「とりあえず座りましょうか」
彼は私をエスコートした。
◇◇◇
「ええ!祐斗君が二人きりで文月ちゃんと?」
文月の友だちの真由が驚く。
「そうなんだ。映画に行く予定だったんだよね?その後の予定とかはあったりした?」
葉月の言葉に真由は首を降る。
(考えろ。僕が文月と行くなら行くなら...)
『葉月、この本とても面白いのよ』
笑顔で本を紹介してる文月の顔が脳裏に過る。
「月島君、その近辺で本を読める場所ないかな?うん。ありがとう。月島君」
電話を切る葉月。
真由はペットの犬を撫でる。
「牧野君...文月ちゃんのこと大好きなんだね」
ポソッと呟く真由の声はかきけされた。
◇◇◇
真由は自分の心にある想いにそっと蓋をする。
文月と初めて話した時を思い出す。
「私も好きなの。この漫画」
学校の図書室に置かれてる漫画を、休み時間に読んでた時に話しかけてくれた。
嬉しかった。
友だちが出来ずにいた私に初めての友だちだったから、文月ちゃんと学校から帰る時にあなたを見た。
学校の花壇に咲いているチューリップやネモフィラに水やりをしている。
その顔がキラキラとしていて羨ましく思った。
牧野君は1年の時に苛めにあって、不登校になったことがある。
2年になって学校に通うようになって、園芸部を立ち上げて学校で優しい居場所を作った人。
「葉月、また明日ね。」
笑顔で挨拶をする文月ちゃん。
「文月...うん、また明日ね。浅野さんも」
牧野君に微笑まれて名前を呼ばれて嬉しかった。
(この気持ちは閉まっておくの。私は文月ちゃんも大好きだから)
「牧野君、私も探しに行くよ。悠人君とはいとこだしね。」
「ありがとう。浅野さん」
真由は笑顔を見せた後、一旦自宅に帰宅後に牧野とともに文月たちを探しに行く。
◇◇◇
文月が読んでる古書は、「面白いですよ」祐斗が手にとって進める本を開く。
母の愛を求めてる青年が母の面影を求めて年上の女性に恋心を持つ。
年上の女性は自分を慕う青年のことは放っておけない気持ちにさせた。
ただ、彼女には慕っている幼なじみがいた。
二人の想いに揺れる女性を書いた物語。
読了した文月はタイトルを見る。
《motherー母の愛》
「後で感想を聞かせてください。ランチにしましょうか。」
何事もないように話す彼に戸惑いつつも返事をした。
「...ええ」
◇◇◇
彼と私はエビピラフとアイスティーを注文した。
エビを口に含むとプリとしてて、炒めた玉子とマッチしていた。
「美味しい」
思わず声がもれる。
「でしょう。僕が好きな場所の一つなんです。」
優しく微笑えまれた。
◇◇◇
店を出る時、会計を払うと言った私に「格好をつけさせてください」と言われてしまう。
「また、来てくださいね。あなたたち恋人同士?」
会計を担当していた50代の女性に尋ねられる。
「そう見えますか?」
祐斗は嬉しそうに答えた後、文月は真っ赤になって否定した。
「違います!」
(調子が狂ってしまう。まるで今の私はmotherの小説の登場人物のよう...)
文月はバッグに入れてあるスマホは着信が鳴り響いていることに気づかない。
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