第6話 誰かに取られてしまうかも

雨がポツポツ降り続くある日の放課後

文月は図書委員の仕事で生徒の本の貸し借りの受付をしていた。


アイドル事務所にいるようなルクッスの男の子が声をかける。

「この本をお願いします」


手に取るとタイトルは植物の育て方。

名前の記入覧には月島瑠偉という名前

どこかで聞いたようなと思った時、ガラガラと図書室のドアが開かれる。

私は記入用紙を預かり本を手渡す。

「はい。どうぞ」

「瑠偉君、本借りれた?」

髪をボブにした女子生徒が彼の名を呼ぶ。

女子生徒に名前を呼ばれた瞬間、瑠偉は愛しい眼で彼女を見つめる。

「借りれたよ。」


(直感で分かった二人は恋人同士なんだろうな。植物の本を持ってたわね。もしかして)

そう思案すると葉月が顔を出した。

「葉月」

「文月紹介するね。二人は園芸部の月島瑠偉君と香取奈歩ちゃん。僕の可愛い後輩」


「どうも」

「よろしくお願いします」

頭をペコリと下げる二人

私も自己紹介をする。

「葉月の幼なじみの藤倉文月です。よろしくね」

私はニコと笑った。


◇◇◇  


図書室から出る3人

「部長の幼なじみ、美人さんですね。文学少女という感じで頭も良さそう。私、地味だし頭も良くないから羨ましいな」

奈歩の言葉に瑠偉は反論する。

「奈歩も充分可愛いよ。」

その言葉に奈歩は顔が真っ赤になる。

「君たちノロケなら他でやってよ」

僕はノロケを出来る相手なんていないんだから。

苦笑する葉月。


その言葉に立ちどまる二人

「部長、俺たちを藤倉さんに紹介したのはどうしてですか?」

「え?」

瑠偉の言葉に目を見開く葉月

「部長にとって大切な人だからだと思いますよ」

奈歩が瑠偉のあとに続けた。

僕は言葉を返すことが出来なかった。


◇◇◇


図書委員の仕事が終わり校舎を出る文月

雨は降り続く。

水色の傘を手にとって開く。


途中で下校途中の小中学生とすれ違う。

(可愛いな。私も葉月と毎日のように一緒に登校してたわね。)


すると、前方に見覚えのある顔がいた。

赤羽悠人である。


「赤羽く、」

声をかけようとすると大学生くらいのソバージュをかけた女性と一緒にいるのを目撃した。

ビニール傘を二人で相合い傘をしている。


その様子が自分が読んでる恋愛小説よりも、色っぽく移り妙にドキドキした文月であった。



◇◇◇

「悠人どうしたの?」

振り向いた悠人。

「いや、誰かに呼ばれた気がして」

腕をするりと組まれる。

「じゃあこっちに集中して♡今からホテル行こう」

年上の女性と遊ぶ時はいつもこうである。


◇◇◇

ホテルについて服を脱いで唇を重ねあう。 

いつものように行為に及ぼうとした時、セフレが、図書室で愛おしげにページをめくる彼女の姿と重なった。

眼鏡をかけて三つ編み。文学少女のような彼女。


図書室にいるのは暇潰しだった。

漫画本を適当にパラパラめくる。母親が新しい男を家に入れて帰りづらい状況が中3から続いていた。

高校に入ってもそれが続いていた。

そんな時、放課後の図書室で彼女と出会った。

彼女は本一冊を宝物のように手にとって、1ページ、1ページをめくると様々な顔をしている。

僕は頬が赤く染まる。

彼女のように本を読んでみよう。 



「あの、そろそろ、図書室を閉めようと思うんですけど」

あなたの声が心地よく現実に引き戻す。

「すみません。この物語が面白くて夢中になってしまいました。」

久しぶりに素で笑った気がした。


◇◇◇


ホテル内

僕はセフレにつげる。

「今日はここまで」

急速に頭が冷える。

「悠人、最近ノリが悪いわよ!」

「....」


ピンとした彼女はニヤリと笑う。

「もしかして、こういうことしたい女でも出来たのかしら?」

「!」


「あら、図星なのね。

先輩としていいこと教えてあげるわ。早く自分の物にしないと、誰かに取られてしまうかもしれないわよ。」


彼女は身支度をさっと調えて、ホテルから出ていく。

僕はさっきの言葉が脳内で鳴り響いた。


(早く自分の物にしないと、誰かに取られてしまうかもしれないわよ)

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