第5話 大切な...

図書室に入った葉月は文月に尋ねる。

「彼と知り合い?文月」

「ええ、よく放課後に本を読みにくるのよ。」

にこっと笑う文月

「祐斗君...」

真由の驚きの声に悠人は微笑む。

「久しぶり、真由ちゃん。」

口角をあげる祐斗

「あら、真由ちゃん知り合い?」

「私の一つ下で、いとこの赤羽悠人君なんだ。紹介するね。祐斗君。私の友達の藤倉文月ちゃんと牧野葉月くん。」

私と葉月はよろしくと挨拶をする。

「文月と葉月...お二人にピッタリな名前ですね」

彼は上品に微笑む。

「じゃあ、また」

彼はそう言って図書館を出ていく。


「もう、相変わらずマイペースなんだから」

ぷんすかと怒る真由ちゃんを、まあまあと宥める。

「文献の葵の上の資料を集めましょう。どうしたの?葉月」

黙ったままの葉月に声をかける。


「ちょっとね。うん、資料探そうか」


◇◇◇

3人は資料を集めて各自まとめることになった。

校舎を出ると、オレンジ色の夕日が照らす。

園芸部が植えた向日葵がキラキラと輝く。

「葉月、秋の花は何を植える予定なの?」

「秋桜かな」

「楽しみね」

お互いに顔を見て微笑む。

真由がコホンと咳をする。

「本当に2人とも付き合ってないの?」

彼女の指摘に2人とも顔を赤くして、ないないと首を振る。

「私と葉月はそういう関係じゃないわ。ねえ、葉月?」

「えっ、」

葉月が目を丸くする。

「ただ、僕にとって葉月は大切な...」

私が疑問を口にした。

「大切な?」

「幼なじみだよ」

文月の問いに明るく話した。


◇◇◇

駅について反対側のホームに真由ちゃんが向かう。私と葉月は帰る方向が同じだ。

山手線に乗車して席に座る二人

「そういえば、葉月。図書室で何か言いたそうだったわね」

「うん。赤羽君という子どこかで見た記憶があるんだ。それに、図書委員の文月はともかく僕とは初対面なのに、ぴったりな名前と言ってたのが気になったんだ」

手に顎を当てて考えこむ。

「そうなのね」

(放課後の図書室にいるのは、図書委員や文芸部、資料集め、テスト勉強。様々な理由があるけど、単純に物語を読むために図書室にいたのは物語が好きなのだと思う...ただ、)

「もしかしたら、彼は寂しさを抱えて物語に助けを求めてるのかもしれないわ」

私のようにー...


◇◇◇

真由は電車内で文月と葉月のことを思い出して笑みを浮かべる。

「あの二人のような関係羨ましいな。」

幼なじみでお互いを大切に思う関係は素敵だと思う。有名な推理漫画の主人公とヒロインのように感じるのだ。

そして、先ほど図書室にいた悠人のことを思い出した。

(祐斗君、本好きだったけ?)





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