第4話 夕陽が差し込む

赤みがかった茶髪の生徒が図書室で本を読んでいる。

1ページ、1ページめくっていく。

物語は孤独を癒してくれる。知らない場所に冒険ができる。世界が広いんだなと教えてくれる。

夕陽が差し込むこの時間が本当に好きだ。

きっとあの人も僕と同じように本が好きなんだなと思う。

おさげの三つ編み。眼鏡をかけた文学少女のような顔立ち。

図書委員の彼女はいつも、愛しげに本を読んでいたから。


物思いに耽っていると、夕陽が差し込む図書室のドアががらがらと開けられる。

想像していた人物の登場に、赤羽裕斗あかばねゆうとはクスリと笑う。


僕に気がついた彼女は目を丸くする。

その後、柔らかく微笑んだ。

「あなたはこの間の。」

「どうも」

彼女に笑みを浮かべる。



◇◇◇ 

数刻前。

図書室まで歩いている。

「文月、葵の上調べるの?」

葉月はげんなりしている。

「そうよ。」

私は笑みが浮かべる。

「源氏物語なら若紫とか」

「牧野君、人気があるキャラクターも魅力的だけど、あえて葵の上調べるのもいいのかもよ」

「流石、真由ちゃん。その通りよ」

真由のフォローを手をパンと叩いて称賛した。

「仕方ないか。早く図書室で資料集めよう。今日は種植える日で」

早く部活に行きたくて、ウズウズしている顔だ。

(クラスの男子たちには難しくても、葉月に園芸部という居場所か出来たことは嬉しく思う。1年前は考えられなかったもの)

「分かったわ」


図書室のドアをがらがらと開ける文月

数名の生徒がいる。

その中に赤みがかった茶髪の生徒がいる。

本当に本が好きなんだなと好ましく思って、話しかける。

「あなた、この間の」

照れ臭そうに頭をさげる。

「どうも」


夕陽が差し込む放課後の図書室。

藤倉文月と赤羽裕斗。

二人の出逢いは物語のような縁を結んでいく。



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