第3話 自分を見てくれる存在
翌朝、学校に登校後
文月は国語の教科書を愛しげに撫でる。1限目は国語である。
(昔から国語は好きだ。一冊の教科書に数々の物語、詩や和歌が記される。心がときめくのだ。)
◇◇◇
授業時間も残りわずか、国語教師の加藤がある課題を提示する。
天然パーマの髪をひと撫でしてから話す。
「3人1組になって源氏物語の登場人物の心理描写について、レポートをしてもらう。提出期限は来週までだ。」
男女、それぞれグループ分けを行う。
「文月ちゃん、一緒に組もう?」
声をかけたのは、
本や漫画が好きで私と気が合うのだ。
「真由ちゃん。うん、一緒に組もう」
口角をあげて笑顔で答えた。
「あと、一人」
パッと見渡すと机にポツンと座ってる葉月の姿。
私は苦笑しつつ、葉月を呼ぶ。
「葉月、私たちと一緒に組みましょう。」
彼は目をパチクリとしたあと、「うん」と言ったあと照れたように頬をかいた。
その様子を見守っていた加藤は静かに微笑んでいる。
◇◇◇
授業が終わったあと、葉月は教室を出ようとした加藤に声をかけた。
「先生、この課題は他のクラスもですよね?」
「当たり前だろう?登場人物の心理描写を考えるのも思考力を高められるぞ」
(そうじゃなくて、グループの課題にしたことです...)
葉月は顔にでていた。
加藤はチラっと文月を見たあと、嬉しそうに笑みを浮かべる。
「先生、嬉しそうですね?」
「青春しろよってことだ。牧野」
「はあ、」
教室を出て廊下を歩く加藤
(自分を見てくれる存在が近くにいる。それは、幸せなことなんだぞ。)
加藤は亡き恋人の香取奈津を思い出していた。
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