第11話 赤雷魔法
暗闇の中、私は立っていた。
私以外には、原型が分からないほどぐちゃぐちゃになった竜の死骸と、それを遠巻きに見る村人のみ。
その村人たちの目は恐怖に怯え、まるで化け物を見ているようだった。
私はそれが、どうしようもなく嫌だった。
だが、そんな目で見ないでと言っても、村人たちは答えない。
まるで、言葉なんて通じないように。
ふと、後ろから視線を感じた。
「ッ!」
振り返ると、そこには一人の少年が立っていた。
「アー、ノルド……」
私は近づき、かつて友だった彼に手を伸ばした。
しかし、
パシン!とその手はアーノルドによって弾かれる。
「触るな……。この、バケモノッ!」
▲▽▲
「……は!」
目を開けて最初に目に入ったのは、天井。
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……」
私は脈打つ心臓、荒い息を整えながら周囲を見回した。
遅れて、自分がベッドの上に寝ていることに気が付いた。
「……ああ。また、あの夢か」
私はベットから起き上がりそう呟いた。
この悪夢は、私が黒竜を殺したあの日から見るようになった。
今でも鮮明に覚えている。
村の人たちの目、アーノルドの罵倒。
私がこの悪夢から開放される時は、はたして訪れるのだろうか?
そう考えていた時、コンコン、とドアがノックされた。
「テティアさ~ん。起きてますか~?」
ノックしたのはリーリアだった。
「ああ、うん」
……考えるのはよそう。今はただ、リーリアに魔法を教えるだけだ。
私はそう頭を切り替え、ベッドから降りるのだった。
▲▽▲
魔法の指南を始めて数日がたった。
その数日間で、リーリアの適正属性は炎と雷だということ、そして、それ以外の属性の適正がすごく低いことが分かった。
その代わり炎、雷属性の適正は私よりも高いようで、この二属性の魔法を集中的に教えると(まだ魔力のコントロールにブレはあるが)みるみるうちに扱えるようになっていった。
リーリアならば、アレを使えるかもしれない。
「リーリア。少し魔導書を貸してくれない?」
「?いいですけど……」
「ありがと」
私はリーリアから魔導書を受け取り、開いた。
えーと、たしかこのへんに……あった。
「リーリア。この魔法を私に撃ってみて」
「……え!?これを、ですか?」
私が見せたページを見て、リーリアは驚いたように言った。
「いいから」
「……分かりました」
リーリアは頷いて、私から距離を取る。
そして、詠唱を始めた。
「我が魔力を糧に紅き雷帝の鉄槌よ、彼の者を裁け!『クリムゾンサンダー』!」
バチィィッ!
と、リーリアの手の平から赤い雷が弾けた。
「……え?」
リーリアは驚いた顔で自分の手の平を見た。
「……どうやら、リーリアには赤雷魔法の適性があるみたいだね」
赤雷魔法とは、全属性の中で最も高い火力を誇る炎属性と、最も早い速度を誇る雷属性が合わさった複合魔法だ。
どれほどすごいかというと、この魔法を極めた魔法使いが放った一撃は、誰も視認することも、防ぐこともできないと言われるほどだ。
しかし、赤雷魔法は炎属性と雷属性に高い適性がないといけないため、ほとんどの魔法使いは使えない。
ちなみに、私も使えない。
「私が……使えるなんて……」
そんな魔法を使えることに、リーリアはまだ信じられない様子だった。
「使えるなら極めるにこしたことはないよ。今からこの魔法を無詠唱でできるようになるまで鍛えよう」
「はい!私……頑張ります!」
「うん。その意気だ」
そして、彼女にも聞こえない、小さな声で言う。
それができたらお別れにしよう、と……。
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