第5話 拒絶
同時刻、森の中にて、マーリンは魔物狩りに勤しんでいた。
しかし突然、
「ガッ……!」
マーリンはうめき声を上げうずくまった。
右の目からポタポタと赤い液体が滴り落ちる。
右目が潰されたのだ。
「使い魔が…死んだ?」
今現在まで、テティアには使い魔張り付かせていた。
それには理由がある。
いくらテティアが危害を加えないからといって、何もしなかったら村人たちも内心気が気ではないだろう。
そのため、テティアの動向を監視するべく、使い魔を張り付かせていたのだ。
しかし、その使い魔が死んだことで、視覚共有していた瞳にダメージが行ったのだ。
だが情けないことに、視覚共有していたというのに、いったい何が起こったのか分からなかった。
少し考えなくても、マズイことが起きているのは間違いない。
「とにかく、村に戻らなくちゃ」
右目を治す時間も惜しく、マーリンは急いで村まで走った。
▲▽▲
「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……」
燃え盛る村の中、私は肩で息をしながら呆然としていた。
そんな私の目の前には、ぐちゃぐちゃになった黒龍の肉塊が転がっていた。
いったいなにが起こったのだろう。
記憶が飛んでしまって、何も思い出すことができない。
だが、これだけは分かる。
「ハ、ハハハ……」
私が黒龍を倒したのだと。
「アハハハハハハハハッッッ!!!!!!!」
私は笑った。
当然ではないか。
自らの手で、家族や仲間を殺した仇を討つことができたのだ。
こんなにうれしいことなど、他にあるわけがないではないか。
「テティア?」
そこで、見覚えのある声が聞こえた。
振り返るとそこには、マーリンが立っていた。
いや、彼だけではない。
村のみんなも、マーリンのそばに立っていた。
「いったい……なにが起こったんだ?その魔物は……いったい……」
「私が!私が殺したんだよ!見て!すごいでしょ!?ねえ!」
すごいねと、褒められると思っていた。
けど、マーリンの顔はとてもそう言えるものではなかった。
「テティア…君は…」
彼は苦虫をかみつぶしたような顔でこちらを見た。
それだけではない。
村人たちは私を恐怖の目で見ていた。
「な、なんで…みんな、そんな目で見るの?」
分からない、分からない。なんで…なん、で…。
ふと後ろを見ると、いつの間にか目を覚ましていたアーノルドと目が合った。
「アー…ノルド…」
私はすがるように彼に手を伸ばした。
パン!
しかし、その手をアーノルドははねのけた。
「……え?」
そこで気づく。
彼が村人たちと同じく、恐怖に顔を歪ませていることに。
アーノルドは唇を震わせ、言った。
「触るな……。この、バケモノッ!」
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