第20話 ※芹奈視点

海に遊びに行った帰りに、廉くんにお願い出来る権利を使ってわがままを聞いてもらってから。

あの時のことが未だに頭の中で再生できるほど脳裏に焼き付いていた。

またして欲しい、また抱きつきたい、撫でて欲しいそんな欲が強くなるばかりでだった。

しかし、最近はお互いの予定が合わなかったり芹奈は課題もあったりとなかなか時間が取れなかった。

「でも、今日は廉くんに会える!」

美咲と神崎くんは今日デートに行くらしく、神崎くんに美咲の好みを教える代わりにと廉くんの予定を聞いてもらったのだ

サプライズで廉くんの家に行けばきっと喜んでくれるよね

私は廉くんの家に着くと、覚悟を決めてチャイムを鳴らす。

ピンポーン

「はーい、ちょっと待ってくださーい」

廉くんの声が聞こえ、足音が近づいてくる。

「はーい」

「廉くん、おはよう」

「え?」

「来ちゃった!」

「え」

「ふふ、私も寂しかったんだよ?だから〜サプライズで会いに来たんだ」

廉くんの動きが止まった、頭の中も空っぽで何も読み取れなかった。

すると廉くんが急に私に抱きついてきた。

「え、え?え?」

「ごめん、ずっとこうしたくて」

「ふふ」

私もずっとこうしたかったので、廉くんに応えるように私も抱きつく。

しばらく2人で抱き合っていると、廉くんはようやく落ち着いたのか私を家にあげてくれる。

「と、とりあえず上がってくれ」

「う、うん」

廉くんが飲み物を取りに行っているあいだ、廉くんの匂いがする部屋でソワソワしながら待っている。

「ありがとう、外暑かったから助かったよ〜」

「あの、芹奈ごめん、急に抱きついたりして」

廉くんが先程抱きついたことについて謝ってきた、絶対に怒らないし引いたりしないことも分かっているはずなのに

私は少しムスッとして廉くんを抱きしめて押し倒す。

「んふ、はぁ〜、幸せ〜」

「え、ちょ!?」

「私もこうしたかったんだよ〜」

私が全体重をかけて押し込んだからなのか、廉くんはそのまま押し倒されてくれた

「こうしてると私が廉くんを襲ってるみたいだね〜」

「その、あの」

すごくいい匂いがして落ち着く、ずっとこのままでもいいくらい。

「ふふ〜、恥ずかしがってて可愛い〜」

「もしかして酔ってたりする?」

「……」

廉くんは私がいつもと違いすぎることに疑問を持って辿り着いた結果は酔っているのか?だった

「わーたーしーも!寂しかったの!神崎くんに今日なら行けるって聞いたから今日来たの!!」

私だって、会えない期間ずっと廉くんのことを考えていたのだ

「ふふ、神崎くんには美咲の好きな物を色々教えたので今頃楽しくデートしてる頃だよ」

「あぁ、今日告白するって言ってたし頑張ってるんだろうな」

「結果が気になるね〜」

あの二人が幸せになるのを祈りつつ、私は廉くんに抱きついて幸せを感じている。

「芹奈さん、ちょっと場所を変えません?地面はちょっと」

「ん〜、じゃあそっち!」

廉くんは少し、体勢を変えたいようで1度私をどかそうとするので、布団に行って一緒に寝ようと提案する。

「あの〜、芹奈さん俺たちまだ高校生なりたてだし清いお付き合いを」

「抱きつくだけだよ?ハグだよハグ」

確かにそういうことに興味が無いわけじゃないけど流石にまだ早いよね。

「ん〜寂しくておかしくなっちゃった、甘えたいの、ダメ?」

「どうぞ」

私は普段の自分なら出さないような声になっていることや、いつもは出したことがない少しぶりっ子な面が出ているのを感じていたけど眠気が勝ちそうみたい。

私の意識はそこで途絶えた。



私は今、とても幸せを感じている。

すごく暖かくて落ち着いて、それでいてドキドキするそんな不思議な感覚。

これは夢なのだろうと分かっている、何も見えないし、何も聞こえない。

でも、そこに不安や恐怖は一切なくて

ただただ自分が1番心地がいいと思える場所だった。

もう少し、もう少しだけ、ここに留まろう起きるのはまだ先でいいよね……

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