第18話 ※ヒロイン視点

「ねぇ、美咲、神崎くんのこと気に入ってるでしょ?」

「そ、そうだけど……でも好きとかじゃないんだよ!?」

いつものおっとりとした美咲の口調が消えるほど焦っているのを見て私はますます2人を応援したくなる。

「私と廉くんは2人でイチャイチャしてくるから美咲も頑張るんだよ?」

「う、うん」

「美咲の水着で悩殺しちゃえ!」

「そ、そんなの無理だよ〜」

美咲は比較的布面積は多いが胸がでかいせいか主張が激しいのだ、同性でも一瞬見てしまうのだ男なんて容易く落とせるんだろうなぁ

それに比べて私はラッシュガードを着て、下の水着も布面積がとても多い物をつけている。

心が読めるようになってから小学校のプールで向けられたいくつかの視線は本当に気持ち悪くて今でもトラウマなのだ。

でも、廉くんも美咲の方を見ちゃうかな……

今からでも脱ごうかな……

そんな事を考えながら美咲に連れられて集合の場所に向かう。

「廉くん待った?」

私が声をかけると廉くんはこっちを見て固まった。

「ふふ、どう?似合ってる?」

私が廉くんにそう聞くと、廉くんは似合ってるとはっきり言ってくれた。

美咲の方をちらっと見たがきっと神崎くんを心配しているんだなとすぐに分かった。

「うん、すっごく似合ってるよ」

私は少し緊張しながら廉くんの心を少し覗いてみる。

すると私の水着をしっかり褒めてくれていて、美咲のことなんて見ていないのが分かった。

露出が少なくて残念にしている様子もほぼなく少しムカッとするのと安心した気持ちがごっちゃになる。

少しくらい、残念がってもいいんじゃない?私の体に魅力がないのかな……

「ふふ、露出はその、2人の時ね、男の人の目線が嫌いで……」

「ありがとうございます!!」

少し、そう言って廉くんの興味を引いてみる。

とても食い付きが良くて、心の中も恥ずかしくて見れないくらい私のことを褒めてくれていた。

「全部聞こえてるんだからね?」

「聞かせてます」

「後で覚えてなさい……」

最近、廉くんが私が心を覗いているのを利用して私をいじめてくるのだ。

揉めちぎられているのに反応できないし、好きな人にめちゃくちゃ言われまくるのは幸せだけど恥ずかしい。

美咲の方を見ると、神崎くんと美咲がラブコメをしていた。

あれがラブコメなどでよく見る水着を褒めあって2人の空間を作っちゃうやつをやっている。

「あの二人凄いね、初々しいカップルって言われても違和感ないよ」

「そうだな」

「このまま、あの二人を2人っきりにしてみるか?」

「いいねぇ、ちょっと泳ぎに行くふりでもしましょうか」

どうやら廉くんが2人のに言ってくれるようなので一足先にその場を離れる。

しばらく歩いていると泣いている小さな女の子がいた。

迷子なのかな?

私が近寄って声をかけてみるとちょうど廉くんが後ろから来た。

「芹奈〜、どうしたんだ」

「あ、廉くんこの子迷子みたいなの」

「うぅ、ひっぐ、うぇぇぇん、ままぁ、どこぉ」

どうやら、海で遊んでいるうちにはぐれてしまったみたいで金髪でお目目がくりくりしていてとても可愛い。

背が小さいし小学生くらいだろうか

「大丈夫だよ、お姉ちゃんとお兄ちゃんがお母さんに合わせてあげるからね」

「……ほんとぉ?」

私がそういうと女の子はこちらを向いて、泣きながら尋ねてくる。

「うん!大丈夫だよ、ね!廉くん!」

私が廉くんに話を振ると廉くんは合わせてくれて必死に女の子を安心させようとしている。

「あぁ!任せておけ、直ぐにお母さんと会えるよ」

「えっと、名前と年齢は言えるかな?」

「はるな、9歳だよ?」

「はるなちゃんって言うんだよろしくね、私、芹奈って言うんだ」

はるなちゃんか、金髪だしハーフ?なのかな

「芹奈お姉ちゃん?お兄ちゃんはなんて言うの?」

「俺は廉って言うんだよ」

「芹奈お姉ちゃんに廉お兄ちゃん!!」

こうやって小さい子供と話しているといつか子供が欲しいなと思ってしまう。

「とりあえず海の家に行こうか」

「そうだね」

私たちは人が集まる海の家に向かうことになった。

「はるなちゃん、お母さんはどんな人かな」

「とっても優しいよ!あとパパとすっごく仲良し!

お兄ちゃんとお姉ちゃんみたいだよ!」

はるなちゃん!!

「ふふ、廉くん私たち夫婦に見えるのかな」

私が廉くんに聞いてみると、とても優しい目をしながら応えてくれた。

「そうだったら嬉しいな」

〈まだ気が早すぎるが、芹奈と結婚出来たならきっと幸せだろうな〉

!?

え、結婚……そうだよねこのまま行けば……

ま、まだ早いし!早すぎるよ!

えっとこういう時はなんて言えば……

「離さないでね〜」

私は本音をそのまま口にすることにした。

これは嘘偽りのない私の本音だった。

廉くんだけはずっとそばにいて欲しい……

「もちろん」

えへへ、絶対に離してあげないんだから


しばらく歩いていると

「お兄ちゃん、歩くの疲れちゃった」

どうやら、はるなちゃんが疲れてしまったみたい

どうしようどこかで一旦休憩する方がいいのかな

「よし、お兄ちゃんがおんぶしてあげるからおいで」

「ありがとう!お兄ちゃん!」

そう言って廉くんは屈んではるなちゃんを背中に乗せる。

はるなちゃんいいなぁ〜

小さい子に嫉妬はしないが羨ましいものは羨ましい。

いつか廉くんにお姫様抱っこでもお願いしようかな〜

そんな事を考えていると海の家が見えてきた、はるなちゃんのお母さんは多分金髪だよね、すぐに見つかる気がするけど、少しこの時間が惜しい気もするのだこうして小さい子を背負っている廉くんの隣を歩いていると廉くんの奥さんになったみたいでドキドキする。

「ねぇ、こうやってはるなちゃんを背負いながら2人で歩いてるとさ、本当に夫婦になったみたいじゃない?」

「そうだな、すっごくドキドキするよ」

私が廉くんにそう聞くと、廉くんもドキドキしてくれているのが分かった。

「はるな!良かった!」

私がそんな事を考えながら歩いているとそんな声が聞こえて、振り返る。

するとそこにははるなちゃんをそのまま大きくしたようなそっくりなお母さん?が慌てた表情で息を切らせて立っていた。

どうやらはるなちゃんのお母さんなのだろう。

「はるなちゃんのお母さんですか?」

「そうです!」

「良かったです、浜辺で1人泣いているのを見つけて海の家に連れていく途中だったんですよ」

「本当にありがとうございます、私が目を離した隙に居なくなっていて……そんなに遠くに行ってたなんて」

確かにあそこは少し海の家から離れている、女の子一人でよくあそこまで歩けたんだと驚いた。

「本当に見つかって良かったです」

「お2人とも本当にありがとうございます」

「いえいえ、私たちもはるなちゃんと話していて楽しかったので大丈夫ですよ」

「はるなちゃん、お母さんが迎えに来てくれたよ」

廉くんが背中のはるなちゃんを起こす。

「んんぅ、まま?まま!」

ゆっくり背中からはるなちゃんを下ろすとはるなちゃんはお母さんの方に走っていった。

「本当にありがとうございました、ほら、はるなも」

「お兄ちゃん、お姉ちゃんありがとう!またね!」

「またね〜、お母さんの言うことちゃんと聞くんだよ〜」

「またな、今度は迷子にならないようにな」

廉くんはそんな事を言いながら、はるなちゃんの頭を撫でる。

それを見た私はとても羨ましいと思ってしまった。

廉くんに頭撫でてもらいたいな……

「うん!今度からは気をつける!お兄ちゃんお姉ちゃん今日はありがと!」

「可愛かったね、はるなちゃん」

「そうだな、本当に子供が出来たみたいで楽しかったよ」

「廉くんは子供好きそうだよね〜」

「そうだな、可愛いしね、妹がいるから面倒を見るのは得意だよ」

2人ではるなちゃんのことを話しながら、浜辺にいく、そこで私はある勝負を廉くんに挑む。

「よし!ねぇ、廉くん泳ぎは得意かい?」

「それなりかな、一応4泳法は泳げるよ」

「ほほう、なら私と勝負しようか」

廉くんもどうやらしっかり泳げるようだ。

私は突然海に走り出し、泳ぎ始める。

合図なんてなしの不意打ちだ。

「なっ、ずるいぞ!」

後ろで急いで廉くんが追いかけてきているのがわかる。

昔から海で泳ぐことが何度かあった私はこれ以上行くと危なくなる前で1度止まる。

「ふふん、私も案外泳げるんだよ」

「驚いたよ、追いつけないとは」

「さて、ここからが本当の勝負だよ、多分何となくだけど浜辺まで100mくらい?はあると思うからここからよーいドンで勝負しよう」

「いいぜ、今度こそ勝ってやる」

「負けたら一つ言うことを聞くってことでどう?」

「それでいいよ、そろそろ浮かんでいるのも疲れてきたし早く行こう」

「それじゃ、よーいドン!」

私は合図をすると腕の力と足で一気に前に進む。

海は凄く穏やかなので泳ぎやすかった。


「ま、負けた……」

「ふっふっふっ」

あれから勝負が決着を迎え

浜辺には勝ち誇った少女と崩れ落ちた男が居た。

「何をお願いしよっかなぁ」

私は勝ったのだ、お願いすることはもう決まっているでも、ここでは少し恥ずかしいので一旦保留にすることにする。

「くっ、何なりと」

「うーん、考えておくね!」

「はい……」

少し廉くんにお願いされてみたい気持ちもあったけど今日は聞いて欲しいお願いがあるのでそれを後で言うことにした。

「ふふ、私も昔から家族とよく海に行ってたからね、水泳も習ってたし〜」

しばらく2人でのんびり遊んで居ると。

「おーい、廉〜」

「せっちゃん!」

神崎くんと美咲が来た。

2人の距離は来た時より縮まっている、美咲が神崎くんを意識しているのが丸わかりだし、神崎くんも美咲をとても気にしている。

「へ〜、美咲、随分仲が良くなったんだね」

私がニヤニヤしながらそう指摘すると、美咲と神崎くんは慌てて距離をとるお互いがお互いを意識しているのがひと目でわかる反応だ。

「何かあったのが丸わかりだね」

「そうだな」

私は美咲から話を聞くために美咲を連れて着替えに行く。

「で?どうだったの」

「えぇっと……好きだと思う……」

「うんうん、これで両思いだね」

「そ、そんなのわかんないでしょ?」

私がこいつは何を言っているんだという目で美咲を見ていると

「だってあんなにかっこいいんだよ?私のこと好きになるわけないよ〜」

「はぁ、美咲も可愛いじゃん?」

「でも〜」

そんな話を繰り返しながら

この2人には幸せになってもらいたいと思った。



着替えて集合した私たちは電車に乗り帰ることにする。

廉くんが家まで私を送ってくれることになり。

神崎くんは美咲を家まで送ることになった。

「今日は楽しかったね、あの二人も仲良くなれたみたいだし良かったよ」

「そうだな、俺も楽しかったよ」

今日は本当に楽しかった、廉くんと付き合ってからずっとドキドキして嬉しくてそんな日々が続いている。

「ふふ、はるなちゃん可愛かったもんね、3人で歩いてる時、夫婦みたいでとっても楽しかったよ」

「俺も、夫婦みたいだなって思いながらはるなちゃん背負ってたよ」

夫婦かぁ、いつかきっとなれるよね。

「ふふ、きっと叶うよそのためにも色々頑張らないとね?」

「え、あぁ、頑張るよ」

ふふ、廉くんも同じ気持ちなんだ……

「あ、降りる駅だ、行くよ廉くん!」

私はわざと1つ前の駅で降りた。

「えへへ、あのね実は最寄りは次の駅なんだけど、ここからでも歩いて行ける距離だから話しながら歩いちゃダメかな?」

今日は沢山遊んだし、廉くんが疲れているならここでお別れになるかな……?

「よ、よし!じゃあ行こう!」

「うん」

私が廉くんの手を握って歩き出すと廉くんも隣を歩いてくれた。

いつもより長い帰り道、なのに時間は直ぐにすぎてしまった。

「あれが私の家だよ!」

もう家に着いてしまった。

チャンスは今しかないよね……

「ふふ、送ってくれてありがと」

「全然いいよ、俺も楽しかったよ2人で歩くの」

「そう言って貰えて良かった……」

「あ、あのね、お願い使ってもいいかな」

「いいよ?何をお願いしてくれるの?」

私は勇気を振り絞ってお願いを口にする。

「あのね……」

私は恥ずかしさを紛らわすのと廉くんの逃げ道を無くすために廉くんに飛びついた。

「え!?」

「頭撫でて欲しいんだ」

「え?」

廉くんはポカンとしている。

ここで勇気を出さないときっと次にしてもらえるのはいつになるか分からないんだ。

「だから!はるなちゃんにしたみたいに私の頭を撫でて欲しいの、ちょっと羨ましくなっちゃったの!」

驚いていた廉くんも、状況を理解したのか私の背中に手を回して抱き寄せてくれた。

そして、空いた手で私の頭を撫でてくれる。

廉くんの匂い、体温、鼓動、全てが特別に写って私を満たしてくれる。

「ふふ、ありがと、やっぱり恥ずかしいな」

「えっと……うん」

「じゃ、じゃぁ!またね!」

「お、おう!」

私は急いで話を切った、このままだときっともっと求めてしまうから。


廉くんが帰って自分の部屋に戻ると私は廉くんに抱きしめられて撫でられた記憶が蘇り。

何度も何度も幸せを感じていた。


「これからまだまだいっぱいできるよね」




作者です。

長くなりましたが芹奈の視点をここら辺で1度書いておきたかったので書いてみました!

案外芹奈さんは大胆で独占欲が強かったりします。

続きが気になるよって人は迷わず応援してくれると嬉しいです。

ハート1つで喜ぶ作者がいます。

モチベーションにも繋がるのでぜひ

ではまた(*´︶`*)ノ




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