第16話 海!海といえば!可愛い子の水着!

「なぁ、廉、花村さん達どんな水着を着てくると思う?」

「鼻の下伸ばしすぎだ、イケメンが台無しだぞ」

悠真は花村さんと一緒にいるようになってから時々すごく甘い笑顔を出すようになった。

花村さんの前だと張り切るところが、もう恋する男子としか言えないのだ。

花村さんもよくよく見れば満更でも無い様子で、俺たちに負けず劣らずの2人の世界を作っている時がある。

「うぅ、痛いところ突くなよ!俺だってこんな気持ち初めてなんだよ……」

「うぶなイケメンだなぁ、散々俺に彼女でも作れと言っていた悠真が……」

「悪かったよぉ」

「まあ、今日は頑張るんだな」

「おう」

俺がそう言って着替え終わると悠真も踏ん切りがついたのか急いで着替える。

「俺たちは偶然いなくなるからな、頑張るんだぞ」

「ま、ま、ま、任せろ……」

ダメそうだなこりゃ、何かいい作戦はないのかね。

俺がどうやって悠真に喝を入れようかと悩んでいると女子2人が着いたようだ。

「2人とも待った〜?」

「廉くん待った?」

そう言って芹奈が近づいてきた。

「ふふ、どう?似合ってる?」

「うん、すっごく似合ってるよ」

芹奈は白のラッシュガードを羽織っており、あまり肌の露出はない。

しかし、ラッシュガードの上からでも分かるスタイルの良さや、髪をくくっている、いつもとは違う姿にドキッとしてしまった。

「ふふ、露出はその、2人の時ね、男の人の目線が嫌いで……」

「ありがとうございます!!」

恥ずかしがる芹奈はとても可愛い。

露出なんてしなくても芹奈の良さが滲み出ているのだ最高かよ!!

「全部聞こえてるんだからね?」

「聞かせてます」

「後で覚えてなさい……」

俺は芹奈に睨まれながらも、離脱する隙を探る。

花村さんは水着を褒められ、悠真は褒めて顔を真っ赤にしてあたふたしている。

あれがラブコメなどでよく見るシーンなのだろう。

「あの二人凄いね、初々しいカップルって言われても違和感ないよ」

「そうだな」

「このまま、あの二人を2人っきりにしてみるか?」

「いいねぇ、ちょっと泳ぎに行くふりでもしましょうか」

俺は芹奈と軽く口裏合わせをした後、悠真達から離れるべく2人に声をかける。

芹奈は先に少し離れた場所に移動したようだ。

「おーい、2人とも俺たち2人はちょっと先に泳いでるから、あとは2人で楽しむんだぞ!!」

「あっ」

「え?」

何か言われている気もするが強引に2人を振り切り芹奈が歩いて行った方に走り出す。

芹奈はどこかな、俺が芹奈を探していると芹奈が小さい女の子と話しているのが見えた。

「芹奈〜、どうしたんだ」

「あ、廉くんこの子迷子みたいなの」

「うぅ、ひっぐ、うぇぇぇん、ままぁ、どこぉ」

どうやら、海で遊んでいるうちにはぐれてしまったらしい。

日本人にしては珍しい金髪で、小学生程の背丈だ。

「大丈夫だよ、お姉ちゃんとお兄ちゃんがお母さんに合わせてあげるからね」

「……ほんとぉ?」

「うん!大丈夫だよ、ね!廉くん!」

「あぁ!任せておけ、直ぐにお母さんと会えるよ」

芹奈の対応に関心しつつ、俺も合わせる。

それにしてもこの子は何歳くらいなのだろうか。

「えっと、名前と年齢は言えるかな?」

「はるな、9歳だよ?」

「はるなちゃんって言うんだよろしくね、私、芹奈って言うんだ」

「芹奈お姉ちゃん?お兄ちゃんはなんて言うの?」

「俺は廉って言うんだよ」

「芹奈お姉ちゃんに廉お兄ちゃん!!」

こうやって小さい子を見ていると、子供って悪くないなって思えるな。

「とりあえず海の家に行こうか」

「そうだね」

俺たちは人が集まりそうな海の家に行くことにした。

「はるなちゃん、お母さんはどんな人かな」

「とっても優しいよ!あとパパとすっごく仲良し!

お兄ちゃんとお姉ちゃんみたいだよ!」

「ふふ、廉くん私たち夫婦に見えるのかな」

「そうだったら嬉しいな」

まだ気が早すぎるが、芹奈と結婚出来たならきっと幸せだろう。

「離さないでね〜」

「もちろん」


しばらく歩いていると

「お兄ちゃん、歩くの疲れちゃった」

どうやら、はるなちゃんが疲れてしまったようだ。

先程からずっと歩いているし、はぐれてからも遊んでいたようだから疲れているのも無理はないか。

「よし、お兄ちゃんがおんぶしてあげるからおいで」

「ありがとう!お兄ちゃん!」

それから少し歩くと海の家に着いた。

着く少し前にはるなちゃんは俺の背中で寝てしまった。

はるなちゃんのお母さんをどうやって探そうか。

「ねぇ、こうやってはるなちゃんを背負いながら2人で歩いてるとさ、本当に夫婦になったみたいじゃない?」

「そうだな、すっごくドキドキするよ」

俺はこの状況がすごく嬉しく感じつつ、はるなちゃんの親を探す。

「はるな!良かった!」

その声を聞いて振り返ると、はるなちゃんによく似た女性が慌てたような安堵したような表情でたっていた。

どうやらはるなちゃんのお母さんなのだろう。

「はるなちゃんのお母さんですか?」

「そうです!」

「良かったです、浜辺で1人泣いているのを見つけて海の家に連れていく途中だったんですよ」

「本当にありがとうございます、私が目を離した隙に居なくなっていて……そんなに遠くに行ってたなんて」

確かに海の家で居なくなったのだとしたら、あの浜辺にいたのは驚きである。

海の家からは少し離れた程度だが、小学生の女の子がひとりでそんなに移動するとは驚きだ。

「本当に見つかって良かったです」

「お2人とも本当にありがとうございます」

「いえいえ、私たちもはるなちゃんと話していて楽しかったので大丈夫ですよ」

「はるなちゃん、お母さんが迎えに来てくれたよ」

俺はそっと背中のはるなちゃんに呼びかける。

「んんぅ、まま?まま!」

俺がゆっくり背中からはるなちゃんを下ろすと、行きよいよくお母さんの方に走っていった。

「本当にありがとうございました、ほら、はるなも」

「お兄ちゃん、お姉ちゃんありがとう!またね!」

「またね〜、お母さんの言うことちゃんと聞くんだよ〜」

「またな、今度は迷子にならないようにな」

そう言いながら俺は、はるなちゃんの頭をぽんぽんと撫でる。

「うん!今度からは気をつける!お兄ちゃんお姉ちゃん今日はありがと!」

元気になったはるなちゃんはお母さんに連れられて帰って行った。

「可愛かったね、はるなちゃん」

「そうだな、本当に子供が出来たみたいで楽しかったよ」

「廉くんは子供好きそうだよね〜」

「そうだな、可愛いしね、妹がいるから面倒を見るのは得意だよ」

2人ではるなちゃんのことを話しながらもう一度浜辺に戻る。

「よし!ねぇ、廉くん泳ぎは得意かい?」

「それなりかな、一応4泳法は泳げるよ」

「ほほう、なら私と勝負しようか」

そういうと芹奈はいきなり海に飛び込んだ。

「なっ、ずるいぞ!」

俺は急いで芹奈を追いかけるように海に飛び込んだ。

芹奈は以外にも泳ぐのが早く、追いつくのが難しい。

波は高くないし、穏やかなので泳ぎやすいがあまり遠くに行く前に追いつかなくては

「ふふん、私も案外泳げるんだよ」

「驚いたよ、追いつけないとは」

結局俺は芹奈に追いつくことはなかった。

「さて、ここからが本当の勝負だよ、多分何となくだけど浜辺まで100mくらい?はあると思うからここからよーいドンで勝負しよう」

「いいぜ、今度こそ勝ってやる」

「負けたら一つ言うことを聞くってことでどう?」

「それでいいよ、そろそろ浮かんでいるのも疲れてきたし早く行こう」

「それじゃ、よーいドン!」

俺は泳ぎ始める、プールとは違い蹴る壁もないし、流れがある分少し泳ぎにくいのが辛い。

しかし、負ける訳には行かないのだ、芹奈に言うことを聞いてもらえるなんてそんなチャンスを逃す訳には行かない!!


「ま、負けた……」

「ふっふっふっ」

あれから勝負が決着を迎え

浜辺には勝ち誇った少女と崩れ落ちた男が居た。

「何をお願いしよっかなぁ」

「くっ、何なりと」

「うーん、考えておくね!」

「はい……」

負けてしまった、水泳には少し自信があったのに……

「ふふ、私も昔から家族とよく海に行ってたからね、水泳も習ってたし〜」

負けてしまったが、芹奈がどんなお願いをしてくるか気になるし楽しみに待っておこう。


しばらく2人でのんびり遊んで居ると。

「おーい、廉〜」

「せっちゃん!」

悠真と花村さんの2人が歩いてきた。

目で見て分かるほどの距離が縮まっていたのを見て俺はとても驚いた。

少し横にずれればお互いがぶつかるのではないかという、手を繋いでいないのが逆に不自然な距離感をみて

悠真はやはり、やれば出来るタラシと言うやつなのか!?と思っていると

「へ〜、美咲、随分仲が良くなったんだね」

芹奈が先に花村さんに指摘をした。

するとお互い磁石にでもなったかのように慌てて離れる。

「何かあったのが丸わかりだね」

「そうだな」

可哀想になってきたので追求は一旦やめて、帰るために着替えてこようという話になった。


「悠真どうだった?」

「頑張ったぜ、俺、もう少し仲良くなれたと思ったら告白するよ……」

俺は着替えながら悠真の話を聞いて少し安心した、告白できるようにお膳立てなんて器用な真似は出来ないけど、悠真には幸せになって欲しい。




作者です。

投稿遅れてごめんなさい

次回は芹奈のお願いの使い道を書こうかな

応援よろしくお願いします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る