第10話 美咲と悠真

※悠真目線


「ごめんね〜強引に連れてきちゃって」

「いや、俺もどうやって花村さんを連れて離れようか迷ってたんだ」

花村さんもあの二人をくっ付けたいのだろうか。

「なぁ、花村さんもあの2人を応援してるのか?」

「そうだね〜、せっちゃんから相談が来た時はびっくりしたよ、いつも告白された目線が気持ち悪かった〜って愚痴ってきたから好きになっちゃったかもなんて聞いたら応援したくなるでしょ?」

この話を聞く限り俺の予想どうりあの2人は両思いだ。

「やっぱりか、あの2人両思いだよな」

「そうだよ〜」

じゃあ、なんで付き合わないんだ?

「多分ね、せっちゃんは今まで恋愛をしてこなかったから好きかどうかが分からないんだと思うの、だから付き合えないんじゃないのかな〜」

「そういうことだったのか」

付き合えよとしか思えないな

「早く付き合わねぇかな」

「わかる〜、あの2人めちゃくちゃお互いのこと好きなのに付き合わないよねぇ、どこの恋愛小説だって感じ〜」

恋愛小説かそんな物語が世の中にはあるんだな、焦れったくて読んでられない気がするのだが。

「ねぇ、神崎くん協力しない?」

「いいぜ」

ありがとう廉こんな美人と話す機会が増えそうだよ。

「じゃ、これ私の連絡先ね」

「せんきゅ〜」

よっしゃ!連絡先ゲットだ!

「これからどうする?解散かどっか遊びに行くか」

「ん〜、花村さんが嫌じゃなかったらどっか遊びに行こうぜこんな美人と遊べる機会そうそうないからな」

「へ〜、神崎くんってチャラいね、そういう子がモテるのかな?」

ミスったかなこれは......

「はは、モテるのはモテるんだろうけど人を好きになったことがねぇんだよ、恋とか分かんねぇ!」

「ふふ、私も恋したことないなぁ、交際経験0なんだよね〜」

「え?そうなのか?すごいモテてるって聞くけど、俺の友達も告白して砕けたって聞いたし」

確か、山田と上野と田中が告白してたはずだ。

「好きでもないのに付き合うのは違う気がするじゃん?だからOKしたことないんだ〜」

しっかり向き合って考えてるんだな......

「へぇ、しっかりしてるんだな」

「そういう神崎くんはどうなの?結構付き合ったり別れたりしてるみたいだけど」

「告白されるのは嬉しいんだけどよ、人を好きになったことがないからいつも疎かにしちゃって別れよって言われるんだよ、みんな思ってたのと違った〜ってね」

「そっかぁ、イケメンも大変だね」

「まあ、得することもあるからいいけどな」

しかし、花村さんはどこか行く宛があるのだろうか。

さっきから話しながらずっと歩いているが、こっちには俺が知る限りゲームセンターくらいしかなかったはずだ。

「なぁ、どこか行きたいところあるのか?」

「あ〜、男の子ならゲームセンターでもどうかなって思って」

「俺はいいけど花村さんはいいのかよ、せっかくなら花村さんの楽しめるところに行こうぜ?付き合うよ」

「結構ゲームセンター好きだから別に楽しめるよ?」

意外と花村ってこういうの好きなのか?それとも気を使われてる?

とりあえず入って楽しめてなさそうならどこか別のところに連れていくか。

ゲーセンに入ってからしばらくすると花村さんの視線が釘付けになっているものがあるのに気がついた。

「あれ気になるのか?」

「え?いや」

「なら行こうぜ」

俺は気まづくなる前にそのUFOキャッチャーの方に近づく。

何やら景品はデフォルメされたドラゴンらしきもののぬいぐるみだった。

「あの〜神崎くん?」

「これ見てたと思ったんだけど違うか?」

「いや〜、違くないんだけどね?」

オドオドしてても美人だと様になるもんだな。

俺は試しに財布から100円を取り出して機械に入れる。

子供の頃からやっているのでかなり上手い自信があった。

幸いにもドラゴン?のようなものは掴みやすい形をしており、引っ掛けるなどの難しい方法を使わずとも何とかなりそうだった。

「おっ、いい感じじゃね?」

「え、上手」

ドラゴン?は取れなかったもののかなりいい位置まで来ていてあと1度程で取れそうだった。

俺は迷わずお金を入れると、2回目をプレイする。

思いどうりにドラゴン?は出口に落ち無事にゲットすることができた。

「はい、これあげる」

「え、いいの?」

何を驚いているのか、俺が欲しかった訳でもないし貰って貰わないと家のどこかに消えてしまうだろう。

「そのために取ったしいいぞ」

「ありがとうね」

流石美人だな照れる顔が可愛すぎるだろ。

「あ、お金」

「いいよ、200円だし、それに......いやとにかく貰ってくれ」

あっぶねぇ、気持ち悪いこと言いそうになったぞ、1回落ち着こう。

「わ、分かった、貰っておくね?ホントにありがとう」

「UFOキャッチャー苦手で、欲しかったけど諦めてたんだ〜」

先程までの申し訳なさそうな顔は消えとても嬉しそうな顔になっていた。

「ちょっとトイレに行ってくる」

「外で待っとくね〜」

「すぐ戻るよ」

俺はそう言って走ってトイレに向かった。

トイレで俺は特に尿意があったという訳でもないのだが、1度落ち着きたかったのだ。

「ふぅ、あの笑顔はズルいだろ......」

かなりの数今まで付き合って別れてを繰り返して来たがここまでドキドキすることはそんなになかった。

これはデートですら無いはずだ、なんでこんなにドキドキしてるんだよ......

あまり花村さんを待たせる訳にも行かないので、呼吸を整え平常心を装いながら花村さんのところに戻る。

すると花村さんらしき女の子の周りに2人の男がいた。

ナンパか!?クッソもっと早く戻っておけばよかった。

「おい!何してんだてめぇら」

俺は気づけば花村さんと男の間に入っていた。

「なんだよお前には関係ないだろ?」

「俺の連れなんだよさっさとどっかに行きやがれ」

俺が男たちを睨みつけていると、面倒くさくなったのか男たちは舌打ちをしながら帰って行った。

「ごめん、花村さん大丈夫だった?」

「大丈夫、いつもならキツく言えば悪態つきながらでも帰ってくれるんだけど、今回はしつこくて」

「ふふ、神崎くんってちゃんとかっこいい所もあるんだね、チャラいだけかと思ってたよ」

「酷くねぇか?」

「ふふ、もういい時間だし帰ろっか」

「おう、それもそうだな」

これ以上は俺の心臓が持たねぇ

俺たちは駅の方まで歩いていく。

「帰りどっちだ?俺はこっちだけど」

「私もかな」

「それじゃあ行くか」

「うん」

無言、さっきからずっと無言だが少し、心の距離は縮まった気がする。

俺たちは電車に乗り、揺られながら帰った。

「私はここで降りるね」

「おう、気をつけて帰れよ」

「ありがと、またね」

俺はその次の駅で降り家に帰った。

「おかえり〜、廉くんどうよ、かっこよくなったの?」

「姉貴か、だいぶとかっこよくなったと思うぞ?」

「写真はないの?」

「撮ってねぇよ」

「使えない弟だね」

「へいへい、すんませんね」

相変わらず失礼な姉だ、これが大学ではモテモテなんだから不思議だ。

俺は部屋に戻るとスマホを開き連絡先の欄にいる美咲と書かれた文字を眺める。

すると通知が来た。

!!!!!!

「え!?」

突然で、しかも送り主が花村さんなこともあり驚いてしまった。

〈今日はありがとう楽しかった〜〉

〈無理やりだったけど神崎くんも楽しめたかな?〉

〈俺も楽しかったよありがとう〉

〈良かった〜、貰った人形大切にするね〜〉

〈おう、そうしてくれ〉

〈あとね、その話があって、今度また4人で遊びに行かない?〉

〈廉を連れてか?〉

〈うん、あの2人と私たち2人でって思ってるんだけど〉

〈いいな、廉にも話をしておくよ〉

〈ありがとうせっちゃんには話しておくね〜〉

〈今日は本当にありがとう、また2人で遊びに行こうね〉

え、2人で?4人でじゃなくか?

〈4人じゃなくて2人でか?〉

〈うん、嫌ならいいけど、今日楽しかったからまた行きたいなって〉

え?マジか、絶対に行きたい

〈もちろん、行きたい〉

〈ほんと?良かった〜また日程決めようね〜〉

〈今日はかっこよかったよ〜〉

〈私はお風呂に行くのでじゃね〜〉

〈またな〉

え?、かっこいい......

俺はドキドキが収まるまでに少し時間がかかってしまった......

「俺も風呂入るか......」









作者です。

こういう、主人公カップルの横でイチャイチャしてる2人組とかも好きなので書いてみました。

ちなみに美咲がメッセージでは少しグイグイ行っていましたが母親のアドバイスを頑張って実行した本人の努力の成果です。

少しこちらは焦れったくなるでしょうが、案外うぶでチョロい悠真が恋に落ちるのは秒読みなのではないでしょうか。

悠真がうぶなのは今までの彼女がそんなに積極的ではなかったり。リードされたいという女の子とばかり付き合っていたからです。


※ヒロインの名前がずっとしっくり来なくて、変えました芹奈(せりな)が正しいです、変わっていないところがあれば教えてください。m(_ _)m

旧名 紲(せつ)

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