風の原精まで

「見つけた」


魔女は言う。


転移の魔法を使い、霊紋戦士をこの場に連れてくる。


「おぉ!?なんだ!?……あぁお前か」


「次の目標を見つけた」


魔女は言う。


「次はどんなやつなんだ」


霊紋戦士は言う。


「場所は紅葉渓谷、その最奥。大妖霊の廃巣。そこに次の目標である風の原精は居る。」


大妖霊の廃巣。かつて大妖霊と呼ばれた狐椛という巨獣の巣。

しかし廃巣と名のつく通り、狐椛は極東の英雄【ユウキ】により討ち取られた。


「わかった。転移の魔法で行くのか?」


「途中まではな。原精の特性……と言うよりは高濃度魔力領域の特徴でな。基本的に遠距離からの複雑な魔法は、弾かれるか強制的に解除されるんだ。」


「??ならば何故、ヴァファワクァラからは転移の魔法を使いここに来れたんだ?」


「基本的に無理なだけだからだ。ここは私の領域と言っても過言では無い。この島の魔力のムラや魔力の流れ等はとっくの昔に解析済みだ。」


「そうか。ならば転移の魔法はどこまで行ける」


「紅葉渓谷から西に直線上、約20巨龍程の位置にある街、セイリュウコクに行く。」


1巨龍=1km

1巨人=1m


青龍国。四大国と呼ばれる東の大陸にある国の1つ。四大国の中で2番目に大きい。多民族国家で出るのが容易。


ヴァファワクァラの10分の1の大きさしかなく、西の大陸の人達からは国と名のつく町だと思われている。


「わかった。いつ行く。」


霊紋戦士は言う。


「今すぐに決まっているだろう。」


魔女はそう言うと転移の魔法を使い、青龍国へ向かった。


◆◆◆


青龍国、東門。


「身分証明証がない方は、出国には1人シーラル金貨1枚が必要です。」


門兵が言う。


シーラル金貨。

世界共通貨幣。魔力を有する生物から取れる素材から、魔法を使用した製造方法で、銅、青銅、銀、金、白金を模した見た目の特殊な精製物で造られている。


「これで良いか?」


魔女は2枚のシーラル金貨を取り出し門兵に渡した。


「ハイ大丈夫です。」


門兵は筒状の手持ちライトのような魔道具を使用して、金貨の真贋を確認すると魔女たちの出国を許可した。


「全身強化、脚力強化、筋力強化、抵抗軽減、加速の魔法を掛ける。急ぐぞ。」


魔女は言う。


「わかった」


霊紋戦士は言う。


魔女は魔法を掛けた後、箒に乗り物凄い高速で真っ直ぐに飛んでいった。


霊紋戦士もそれに続き、強化された体で、とんでもない速度で魔女について行った。


道中、魔物や野生動物にぶつかり破裂させたり、大きい地面の亀裂ひとっ飛びで越えたりしつつ、1時間程で紅葉渓谷に到着した。


「更に風属性耐性、衝撃耐性、骨硬化、自由呼吸の魔法を掛ける。ここからは風の原精の領域だ。」


魔女は、濃密な風属性魔法が吹き荒れ、紅葉した葉が舞い散る渓谷を観ながら言った。


「わかった。風の原精の他になにか居るか?」


霊紋戦士は言う。


「いない。全てこの魔法製の風に粉微塵にされ風の原精の養分にされたようだ。」


魔女はそう言うと、妖精級の魔素結晶を取り出し、紅葉渓谷に投げ入れた。

その瞬間に魔素結晶は粉末となり、奥へ風に乗り飛んで行った。


「一応、強厚魔力装甲を掛けておく。行くぞ。」


quilette haevy gaurd shirld aoul body coatyng rang rang rang timnev


魔女が唱え終わり、霊紋戦士は自身の身体に亀の甲羅のような膜が付いたことを確認すると、紅葉渓谷に入っていった。


quilette rang rang sarch sard ai

quilette rang rang vois hawling maus


「第三眼、遠反響口。聴こえるか?霊紋戦士。今回私は回収時以外紅葉渓谷に入らない。お前に掛けた魔法を私自身に掛けなければならないからだ。」

「そうなると一つ一つの魔法の効力が弱くなる。いくら私が天才で最強だとしても限度がある。なので紅葉渓谷の外からお前に支援魔法をかけ続ける。どうにか私無しで風の原精を無力化しろ。」


魔女はそう言うと、周囲に半球状の結界を張り地面に座った。


◆◆◆


紅葉渓谷、浅部。


「ッッグ!!」


カンッカンッ


霊紋戦士は翔んできた拳大の岩を避けきれず、受けて仰け反りつつも、足は止めずに最奥へ向かい続けている。


「渓谷というだけあって周囲は高い崖に囲まれているな。今の所は真っ直ぐ走るだけで向かえている。」


「そろそろ道が二手に分かれるそこを右へ行け」


魔女の声が聞こえてくる。


「わかった」


霊紋戦士は言う。


◆◆


霊紋戦士は走り続けた。

周囲には風で舞い散る紅葉。風の原精が意図的に行っているのか、偶然なのかはわからないが、度々拳大の岩が翔んでくるのを避けるか、砕くかをしていなしつつ走り続けた。


しばらくすると奇妙な場所へ出た。


地面が遙か下にある、巨大な大穴だ。

落ちたらひとたまりもないだろう。


その大穴には、風で浮く岩石の足場が複数個あり、その他に下から上空へ吹く謎の気流があった。


「擬似飛膜を掛ける。気流を使って岩場に飛び移りながら対岸を目指せ。ここは恐らく風の原精が作った遊び場のような場所だ。」

「ただ、あいつ自身はやらずにやっているところを見て愉しむ用だろうがな。」


魔女の声が聞こえると、首の付け根から手首を端に、腰の辺りまでの長さのある薄い膜が霊紋戦士の鎧に出現した。


「ふぅ……」


霊紋戦士は緊張を和らげる為に軽く深呼吸をした後、勢い良く駆け。


飛び上がった。


両腕を広げ、風を膜に受ける。


ゴォォ!!


強い衝撃を受け、肩が外れそうになるが気合で耐えて、空中で身体を動かし微調整する。


1分ほどで体制が安定した霊紋戦士は、最近の岩場に向かって飛んで行った。


「グゥッ!」


霊紋戦士は岩場に落ちるように乗った。


「はぁ…コレは…精神に来るものがあるな。赤鱗の巨竜と戦ったときよりも怖い。」


霊紋戦士は対岸を見る。


「これがあと6回か。……怖いな。」


「何をしている。まさかこの程度で腰が抜けたのか?弱虫が。貴様は乳離れしたばかりの幼子か?さっさと行け。」


魔女の声が聞こえる。


「ッチ!!誰が弱虫だ!!この程度屁でもない!!まだ死にかけの化け茸のほうが恐ろしい!!!」


霊紋戦士は勢いよく立ち上がり。足場の岩を抉る勢いで地面を蹴り、気流に乗って行った。


25秒。

1つ足場を移動するまでの時間だ。その内、空中にいた時間は18秒。たったそれだけの時間で霊紋戦士は600メートルはある大穴を抜けていった。


「はぁ…はぁ…クソ。魔女め。……あぁもういい。進もう。」


霊紋戦士は何とも言えない憤りを飲み込み、進んでいった。


◆◆


10分程度走り続けた後、風が更に強い場所に着いた。


「そこだ。そこが大妖霊の廃巣だ。その中心に奴は位置取っている。狙う場所は火の原精と似ている。封風翡翠が身体の中心にあるはずだ。それを断つか砕け。」


魔女の声が聞こえる。


「わかった。」


霊紋戦士は返事をすると、剣を抜き斬撃のような風が吹き荒れる中へ進んでいった。

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