魔女と霊紋戦士の旅~逃げ散った六原精を求めて~

Hr4d

火の原精

「霊紋戦士。速くしろ。遅いぞ」


そらとぶ箒に跨る、幼い見た目の魔女は言う。


「なら俺にもそれを寄越せ。死に損ない」


地面を走る全身甲冑の男は返す。


「軟弱だなそれでも戦士か?」


「ああ、戦士だ。霊紋が付くがな。そして俺はお前とは違うただの人間だ。化け物。」


「ッチ。減らず口を叩くなさっさと走れ。被害が増える前にな」


そう言うと魔女は箒を早めた。


「ック…この後の戦闘で死んだら化けて出てやる。」


魔女を追いかけて霊紋戦士も足を早める。


この二人、魔女と霊紋戦士は主従関係に有る。

二人の旅の目的である妖精との戦闘で瀕死になった霊紋戦士は、魔女に助けられ実力を買われて一方的に主従契約を結ばれた。

これが二人が共に行動している理由である。


旅の目的だが、魔女が実験のために目覚めさせた六原精が想像よりも凶暴であり手に負えず逃がしてしまった結果、世界中で被害を出し始めた。

それに責任を感じ、再び眠り付かせる若しくは封印するために世界中を奔走している。

魔女はその途中で今追っている火の原精と戦い敗れた霊紋戦士を捕まえた。


十五分後。


周辺で最も大きい………いや、元最も大きい街だった場所。

この大陸の東を支配する国の首都ヴァファワクァラ。


現在進行系で火の海となっている跡地に着いた。


「あああああ」

「きゃーーー助けてーー」

「いやーーー」

「死にたくない!!死にたくない!!!」


「阿鼻叫喚だな」


魔女は言う。


「誰のせいだ」


霊紋戦士は言う。


「始めるぞ。水の加護を与える。火の原精は胸にある燃焼金剛石が核だ。」


「わかった。」


そう言うと、霊紋戦士は薄青色の膜に包まれた。


「道を開ける。突っ込め。」


quilette filirwy valnard


ドンッ


魔女が唱えると、霊紋戦士と火の原精の間にある瓦礫が全て吹き飛んだ。


「霊紋発動。凍身冷息。」


霊紋戦士が呟くと、鎧の隙間から淡く水色の光が漏れ出し周囲に冷気が漂い始めた。


氷の霊紋だ。


霊紋戦士は走り出す。


quilette quickkete fuut


魔女が加速の魔法を唱える。


霊紋戦士は加速する。


2秒後、腰から直剣を抜いた霊紋戦士は冷気を纏わせて火の原精を斬り裂いた。


「Vollllllllllvovovovovovovovo!!!!!!!!!!!!!!!」


燃焼金剛石に少し傷がついた、火の原精はそのクリオネの様な身体を悶えさせ、大声を出し暴れ、同時に豪炎球を周囲に撒き散らした。


「冷凍波線」


霊紋戦士は腰を深く落とし、剣により多くの冷気を纏わせ大振りで、左から右へ薙いだ。


ブォン


薙いだ剣から極冷の剣波が放たれる。

剣波は露を生み出すほどに冷たい軌跡を残しながら火の原精へ飛んで行った。


しかし、剣波は放たれた豪炎球によって消された。


飛んできた豪炎球を一刀しつつ、火の原精に近づく。


「氷柱飛」


走りながら左手を火の原精に向けて氷柱と呼ぶには太く無骨な物を3本生み出し飛ばす。


それをおとりに火の原精の左側に回り、もう一度、冷凍剣波を放ち、更にそれをおとりに背後に回り燃焼金剛石に向かって跳ぶ。


「トドメだ。絶対零度の剣」


絶対零度の剣。斬ったもの全てを停止させる秘技。それは有機物と無機物の他、魔力の塊や自然現象も例外ではない。


濃密な氷属性に気がついたのか火の原精が霊紋戦士の方を向く。


「邪魔はさせん。」


quilette timstap oluart


魔女の向けた右手から円形のドス黒い波動が放たれる。


それにあたった火の原精は波動が身体に纏わりつき身動きが取れなくなった。


「感謝はしない!!」


霊紋戦士は大きく振りかぶり、真一文字に燃焼金剛石を斬り裂いた。


「qyuuuuvaaaaaaaaaaalaaaaalalalalalaalla!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


火の原精は耳を劈く大声と共に、周囲の物を灰燼と化す熱波を放ちながら、2つに割れた燃焼金剛石の中へ消えていった。


quilette aquia bearle


魔女は水の加護を纏い燃焼金剛石を回収した。


「熱い。身が焼ける。息が苦しい。」


鎧が真っ赤になった霊紋戦士が魔女の元へきた。


「脱げばよかろう」


魔女は言う。


「契呪だ。霊紋を得る代わりに日光や月光等の光を身に浴びるとそこから身体が腐り落ちる。だから脱げない。」


「お前が臭いが理由がわかったよ。」


pyhite warshid

quilette down howfamcoovam


「スーハー。助かった。」


鎧が元に戻した魔女に感謝する。


「ついでに汚れも消しておいた。」


スンスン


「………まぁ。マシだな。」


少し渋い顔をしながら魔女は言う。


「そうか。すまない。」


霊紋戦士はいう。


魔女はその後、時戻しの魔法を使い街をもとに戻した。

……元、というが、蘇生などはできないため、住む者の居ない巨大な街という不気味な物が出来上がった。


「さて、先ずはコイツを封印するぞ。」


魔女は言う。


「わかった。」


霊紋戦士は返す。


魔女は転移の魔法を使い、封印場所へ向かった。


永遠の楽園島。


ここは名前とは真逆に超濃密度の魔素により枯れたハゲ島である。だが、魔法の実験にはうってつけの場所である。


ここの深部。

巨大な地底湖を改造した祭壇場。


祭壇場と呼ぶに相応しい装飾や石柱、石像があるが、それとは違い、明らかに戦いを目的とした領域が中心に造られている。


魔女と霊紋戦士はここに出た。


「水の加護、皮膚硬化、生命力強化、低温耐性を与える。戦いの準備をしておけ。」


魔女は言う。


「封印には一度出さなければイケないのか」


霊紋戦士は返す。


「そうだ。霊紋戦士。お前は倒すのではなく捕まえることを考えろ。」


「わかった。霊紋開放。凍身冷息。」


魔女は異空間収納の魔法から様々な触媒をだす。大捻角鹿の角粉末や巨人級の純粋魔素結晶等だ。


それらを融合の魔法で1つの液体にして球形にする。そこへ火の原精の入った燃焼金剛石を入れる。


数秒後、周囲の石が溶解し始めた。


「極冷息。……スゥ……ハァーー!!!」


兜の隙間から凍てつく息が吐かれる。


霊紋戦士を点に扇状に広がる極寒の白い霧は熱を中和していく。


入れたから5分後。1つの火種が宙に現れた。


火種は周囲の空気を直接燃やしながら取り込み巨大化する。


霊紋戦士はそこへ飛び込み、火種を全身で抱く。


「………ァハァ!!……ァァ……クァ…」


火種から放たれる熱波は霊紋戦士の口内から喉、肺を焼いてゆく。


「%!@#℉$④%”◇✩↝+‥◆❝≦∅∇∉」


「外空間存在の代弁。私が右手に持つこの純粋魔素結晶に入れ。」


火の原精は霊紋戦士から離れ魔女の持つ結晶の中へ吸い込まれていった。


quilette quars absolutely rette phyvan earph oluilet vamvirus


「絶対命令呪言。これは主の命令である。我らが主、シーレイトの許可無しにこの結晶から出てはならない。」


魔女がそう言うと火の原精が入った純粋魔素結晶は黒く染まり、炭のような見た目になった。


「∉∅∇…治癒。」


「……カッハ!!はぁはぁ。死ぬところだった」


「捕まえろとはいったがあのように愚直な行動を取るとはな。想定外だったぞ。」


「そうか。で、どうなった。」


「無事終わった。後は疑似地獄に入れるだけだ。」


「そうか。ならば次に行くときに呼べ。俺は休む。」


「あぁ、休め。使えるからな。お前に死んでもらっては困る。」


そういった後、霊紋戦士は島の表面にある豪邸の一つの部屋に向かい眠った。


魔女は疑似地獄と呼ぶ、生肉の塊のような脈打つ生々しい、手のひらサイズの箱の様な物を取出し、魔力を流して開き、中に炭の様になった純粋魔素結晶を入れて再び閉じた。


「さて、次に近い原精はどれでどこに居るだろうか。」


魔女は探知の魔法を使い始めた。

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