第16話 もう一つのエクスカリバー

 ――――


 サンポアスティ国 女王の間 別名ライオン宮


 床の水面に水流が滞り、天井からの雨が止んだ。蔓で覆われている外廊下へと続く大窓ガラスの外には、白い煙が充満していた。


 女王の御前には、御膝元の家来や重臣以外に、鬼窪王の姿があった。


「アスティ女王ー。なんかさあ、北の館からの魔族の襲撃がこっちの方まで酷いんだって? こんなに南なのになあー」


 鬼窪王は案外、今でも楽観視していた。

 傍らのソーニャ女王も落ち着いている。


「さよう。ここはもう駄目であろうな……ラピス城の鬼窪王よ……そなたの方は皆、無事だったのか?」

「……」

「そうか……そうであろうなあ……」


 アスティ女王は項垂れた。

 

「陛下……これは、眉唾物なのですが……お耳に入れたく存じます。以前に北のトルメル城に勇者が現れたと申しましたが、何やらトルメル城から向かった。その勇者が……北の館を壊滅させたと……」

「……ほう。……う! そ、それは真か?!」

「陛下。ただの噂かも知れませぬ……どうか。こ、ここは慎重に……」 


 アスティ女王はこのところ閉じ気味だった目を見開いた。

 鬼窪王は、仰天している。


 別の重臣がいった。


「それでも、行ってみる価値は十分にあるな。その勇者の名は何と申すのだったか?」

「はっ! 確か……秋野 憲一という異世界人です……」

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