第13話
ぼくは元来た城下町の道を走った! おおよそ自分に出せる限りの全速力で!
コーリア!!
頼むから無事でいてくれ!!
ぼくは心の中で叫び続ける!
逃げ惑う人々をどかしどかし、思いっ切り走った。
白い腐敗が建造物の隙間から漂ってくる。
その白い腐敗の発生源は、黒いボロボロの衣服を着た羽つきの二本足で立つ。獣の大軍だった。獣は白い腐敗を吐き出しながら、同時に多くの人々を牙や爪でも犠牲にしていた。
その獣は、北の方から大量に進軍してきていた。
ぼくはそれらを無視して、城下町の脇道を突っ切る。
しばらくすると、トルメル城の外壁が見えてきた。
正門へと回った。
ぶすぶすと白い煙を発し、正門や外壁が腐り落ちている。だけど、突き進む。
「コーリアさーーーん!! ライラックさんーーー!! ハアッ! ハアッ!」
ぼくは、ありったけの声を振り絞って、叫んで探し回った。
一目散に走っては、目指すは、ぼくの寝床だと自分に言い聞かせた。そして、ライラック家の客間だ。
白い腐敗を気にも留めずに、広間を抜け、階段を上がる。
手足に激痛が起き、腐り落ちていく錯覚を覚えるが、二階でコーリアとライラックを探した。
ふと、知らないドアが半開きなことに気が付いた。
ぼくは、恐る恐る中を覗いてみると……。
う?!
卒倒しそうになった。
中の様子に激しい吐き気を覚える。
それ以来、ぼくは踵を返して、このトルメル城の祭壇へと向かった。
もう、この世では……。
コーリアにも、ライラックにも会えない……。
走りながら、自然と涙が出てきた。
ぼくは、当てずっぽうで、広大なトルメル城を走り回り、祭壇のありそうな地下へと続く扉を開けた。
そこに、祭壇はあった。
トルメルの国旗が両端に幾つも立ててある。薄暗い地下だった。その奥に小さな祭壇がある。祭壇の上には白色でぼくの掌の模様と同じものが刻まれている。剣と鎧、そして、盾があった。
ぼくは、すぐにそれらを装備すると、今度はトルメル城の外へと向かった。途中で、外廊下に倒れている女性を見つけた。
「もしや……勇者さま! ああ……ああ……ああ、どうか、この国、城をお守りください! まだ生きているものもおります!」
「……わかってるよ……」
ぼくは、その女性を近くの部屋へと押し込み。部屋の小窓を開け換気を良くすると、再び外へと向かった。
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