第12話

 北の城の方から、大量の白い煙が爆発的に上がり。鎧を着た大軍がこちらに向かって逃げてきていた。だが、その中で、一人の男がぼくのところへ駆けて来た。その後ろには、兵がどんどんと現れては、倒れ、現れては、倒れていた。


 壮齢のその男は、白一色の鎧を着ていた。


 その男は、どこかライラックに似ていた。


「その服装! 君が、勇者だな! この国はもう駄目だ! すぐに南へ逃げろ!!」

「え?? 一体? 何が起きているのですか??」

「白い腐敗だよ」

「白い腐敗??」

「触れると、腐って白骨化するんだ!! さあ、逃げろ!!」

「えええ!!」


 ぼくはコーリアのことを思い出した。


「コーリアは、トルメル城にいる!」

「もう助からん!!」

「……」


 ぼくは、唖然とした。

 勢い余って、ぼくはその男の腕を握り捻り上げた。

 ぼくはあまり力を入れていないというのに、その男の腕がミシミシと悲鳴を上げる。


「その鎧と剣は?! どこに??」

「ムッ! この腕力!! 君は勇者だったな。なら、トルメル城の祭壇に行け!! そこには、特別な鎧と剣と盾がある!! だが、そこは白い腐敗が覆っているぞ!!」

「わかった!!」


 ぼくはトルメル城へと走り出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る