第2話

目の前の彼女は友達のいない僕でも知っている学校の人気者だ。

そんな彼女が僕に生きる希望を?ありえない。

「えっと、篠原樹里さんだよね、隣のクラスの。」

「君のクラスと名前を知らないから隣のクラスかは知らないけど名前は合ってるよ。君の名前は?」

「鈴木...輝。輝くと書いて、ひかる。」

クラスも名前も知らない奴に「生きる希望をあげる」なんて言ったのか、この人は。

「なんだ、もう名前は輝いてるんじゃん。ひかるくんかあ、わたしの弟と同じ名前だ。」

気のせいだろうか、彼女の表情が一瞬曇ったのは。

「ひかるだと弟と同じだし何かあだ名付けようかな?うーん、ひーくんとか?」

「なんでもいいよ。」

「じゃあ決まり!ひーくんのこれからの人生はわたしがもらいます。」

「妙な誤解を生むからその言い方は今後使わないほうがいいよ。」

「え?誤解って?ひーくんが捨てようとした人生をわたしがもらっただけじゃない?」

彼女は純粋に疑問の目を向けてきた。自覚がないのか。

「よし!そうと決まれば早速行動!行くよ!」

「え、行くってどこに、というか授業中...」

「えーそれ君が言う?授業中の誰にも邪魔されない時間に誰にも邪魔されない場所で死のうとしてたのに?」

そう言われてしまうと何も言い返せない。

僕はスキップしそうなくらい機嫌の良さそうな彼女に付いて屋上を後にした。

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