第78話 最終ステージでは以前のボスが雑魚として登場したりする
ハイドラの集団が僕たちの行く手を阻む!
「そんな馬鹿な、ハイドラが10人……いや、20人はいるぞ!」
「全部で30人だ。奴らはネビュラの魔力によって、量産されたハイドラなのさ。ネビュラの元へ行くには、こいつらを全部倒す必要があるぜ」
「なんだって!」
ハイドラの恐ろしさはまだ記憶に新しい。
一人でも残虐で強大な敵なのに、それが30人もいるなんて、シャレにならないぞ!
「大丈夫だ。今のボク達はレベル99だ。メタルハイドラでもないし、恐れなくてもいい」
とある有名なアニメ映画で、恐ろしい強敵を死ぬ気で倒したと思ったら、今度は集団でそいつらが現れた時の恐怖を思い出したが、それと比べたらマシか。
それに、そうだ。あの時はレベルが1だったが、今は最高レベルだ。
僕達も確実に強くなっている。
「よ、よし。やるぞ!」
僕は一人のハイドラに向かって切りかかった。
レベル99の僕ならば、戦えるはず!
そう思って繰り出した僕の攻撃は見事に回避された。
違う。外れたのだ。
「どきたまえ! 雑魚めが!」
「ぐわっ!」
反撃を受けて吹っ飛ぶ僕。
よく考えたら、ステータスが最高値だとしても、僕の腕前は素人以下だった。
「兄さんは下がっていて。私がやるわ」
「そうだな。トオルは痛みを感じないから、ちょっとしたダメージでも問題はないが、やっぱり何が起きるか分からないからな。首にでも直撃して、即死したら笑い話にもならないぜ」
「うう、確かに……」
僕はとぼとぼと後ろへ下がっていった。
ちょっと恥ずかしかった。
結局、僕が最弱人間である事は変わらないようだ。
『俺』がいなくなった今、残ったのは何もできない弱い僕だけだ。
辛い現実を突きつけられてしまった。
やはり『俺』の言う通り、気付かない方が幸せだっただろうか。
いや、この程度で落ち込まないぞ。決めたんだ。
そうじゃなければ、『俺』に顔向けできない。
「トオルさん。誰だって調子の悪い時はあります。トオルさんは、普段はあんなに強いのだから、気にする必要はないですよ!」
ヒカリが僕を回復しながら、天使みたいな笑顔で励ましてくれる。
そういえば、ヒカリはまだ僕の事を強いヒーローだと思ってくれているんだな。
でも、それは大きな勘違いだ。
本当の僕は最弱人間だ。
この事も、そろそろ白状しなければいけない。
この戦いが終わったら、今度こそヒカリに真実を話そう。
「さて、今度は私が相手よ」
僕と入れ替わる形で千奈が一人で前に出る。
それを見たハイドラの一人が怒りの表情を彼女に向けた。
「女ぁぁぁ! 待っていたぞ! あの時の借りを返してやる!」
どうやら、以前に千奈にやられた奴と同じ個体も混じっているようだ。
ちなみにハイドラは『俺』と『僕』が同一人物とは思っていないらしく、僕については無反応だった。
まあ、あの時は下半身が無かったし、本人も忘れたい記憶だったかもしれない。
「ふん。量産されるなんてね。やはり、あなたは雑魚だったようね」
「ほざけ。もうまぐれは無いぞ! 食らえ、
30人のハイドラ達が一斉に
「ちょっと待て! それはさすがに反則だろ!」
一発でも恐ろしい速度と威力の
「後悔しろ! そして死ねぇぇ! ふははははは………………はひゃ?」
大笑いしているハイドラの首は、すでに切断されて宙へと浮いていた。
30発もの
「お、おのれぇぇぇ!」
残りのハイドラ達が一気に千奈に襲い掛かるが、一人、また一人と彼女の剣によって首を飛ばされていく。
「残念。まぐれじゃなかったみたいね」
考えてみれば、千奈はレベル1でハイドラを倒したのだ。
レベルが99の今なら、ハイドラが100匹いようと、余裕ではなかろうか。
「センナに任せておけば大丈夫そうだな。だが、ここは一気に決めようか」
リルがアルマゲドンの詠唱を始める。
「ヒカリ、沈黙草を使ってくれ」
「は、はい」
「虚空より来たれ! アルマゲドン!」
術を発動。
ヒカリはそのタイミングで沈黙草を使う。
「やれやれ。いきなり撃つなんて、酷いじゃない」
大量の隕石に襲われる千奈とハイドラ。
しかし、千奈は今回も当然のごとく隕石を弾き返している。
いや、それだけじゃない。
前回で慣れてきたのか、隕石を弾きながらも、同時にハイドラ達の首を落としていくという離れ業もやってのけた。
完全に人間業じゃない。
「馬鹿なぁぁぁぁぁぁ!」
こうしてアルマゲドンと千奈の剣妓によって、30人ものハイドラ達は、あっけなく退場した。
復活して量産されたボスはかませになるという法則を聞いたことがあるが、今回のはまさにそれだ。
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