最終決戦!!

第77話 俺、この戦いが終わったらみんなでオフ会をするんだ

「トオル、どうした? ずいぶんとすっきりした顔をしているじゃないか」


 自分との会話が終わり、気が付けばリルが僕の顔をのぞき込んでいた。


「ああ、ちょっとね。それより、行こうか?」

「いいだろう。みんな、準備はいいか?」


 僕達はネビュラの城の前で、四人揃ってズラリと並んでいた。


 まるで最強のチームがお通りだと言わんばかりのオーラを漂わせている。


「なあ、この戦いが終わったら、ボクのギルドに入らないか?」


「ギルド……か」


 ギルドとは特定の仲間たちが集まる場の事である。

 このお誘いはリルが僕たちを気に入ってくれた証でもあり、本来なら喜ぶべきところだ。


「でも、僕たちみたいなのがギルドに入ったら、迷惑じゃないかな?」


「大丈夫だ。ボクのギルドは中二病ギルドなんだ。ちょっとくらい変わっていても、闇の包容力で受け入れるぜ!」


 中二病ギルドなんだ。

 っていうか、闇の包容力って、安心できるのか怖いのかどっちなんだよ。


「それでも、僕たちだと流石に他のメンバーも面食らってしまうんじゃないか?」


「安心しろ。メンバーはボク一人しかいない。………ふ」


 か、悲しい!

 オンラインのフレンドは多いリルでも、中二病ギルドではメンバーを集められずに、一人となってしまったらしい。


「一人か。気に入ったわ。是非ともみんなで加入しましょう」


 メンバーが一人だと分かって、上機嫌となる千奈。

 どうやら自分だけぼっちにならない事に安心感を覚えているらしい。


「まあ、そうだね。いい機会だし、戦いが終わったら、皆でギルドを組んでみるか」


「その時は、ついでにオフ会をしましょう!」


 ヒカリに関しては、オフ会の約束を取り付けてしまうくらい乗り気だった。

 これで、クリアー後のお楽しみも増えたわけだ。


「でも、その『俺、この戦いが終わったら○○するんだ!』って感じ、縁起悪いな」


 死亡フラグビンビンです。


「なら私はこの戦いが終わったら、思う存分兄さんに『刺激』を与えてあげるわ。あんな拷問されても喜ぶぐらいだから、手加減なんていらないってことが分かったし」


「じゃあ、私はこの戦いが終わったら、思う存分トオルさんを看病します! センナさん、手加減なしてやってくださいね? その方が看病し甲斐があります!」


 なんだそれ。

 勝っても負けても、僕は地獄じゃね?


「僕はこの戦いが終わったら、誰もいない世界へ逃げようかな」


 次々とよく分からないフラグを立てていく僕達。

 最終決戦前に何やっているんだろう。


「フラグか。ククク、そんなものにボクたちが負けるはずがない。今のボク達には、運命さえも押し返せる闇の力があるさ」


 リルは自信満々な様子で語る。

 運命を押し返す……か。


 そうだな。運命なんかに翻弄されない。

 『あいつ』はその事を教えてくれた。


 この戦いが終わったら、少しはあいつを見習ってみよう。

 僕は密かに戦いに対する決心をしていた。


「そうだ。カオス・オブ・アルマゲドンだが、ネビュラは精神力が強いので、心を壊すやり方は通用しない。だから、より攻撃に特化することにした」


 リルがヒカリに何かを渡す。


「ヒカリはアルマゲドンが発動したら、『沈黙草』を使ってくれ。これで回復は封じられる」


 沈黙草とは、一時的に魔法を封じるアイテムである。

 リルがアルマゲドンを詠唱するので、サイレスは同時に使用不可である。

 なので、アイテムの力を借りるわけだ。


 盾役の千奈がアルマゲドンを全て回避できるのが確定したので、もう回復をする必要はなくなった。

 アルマゲドンは、攻撃の手段として使えるようになったのだ。


「よし、それじゃ行くぜ!」


 僕達はネビュラの城へと突撃した。

 今回は四人揃っているので結界は素通りだ。


 城に入ると、次々と敵の集団が襲ってきた。

 ネビュラの親衛隊か!?


「待ってください。あれって……」

「馬鹿な!」


 敵の集団を見た僕とヒカリが、驚愕の声を上げる。

 目の前の集団が信じられなかった。

 それは僕のよく知る集団だったからだ。


「くくく。元気にしていたかね? クズども」


「ハ、ハイドラ!?」


 敵の集団は、ハイドラだった。

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