第75話 最強のパーティー
そうして、永遠とも思える隕石の嵐が終わった。
辺りは隕石による衝撃で穴だらけとなっており、元の洞窟の面影はまるでない。
その状態は荒野だと例えてもいいだろう。
「ふう」
軽く息をついてその荒野に腰を下ろしている千奈。
どうやら全ての隕石を弾き返すことに成功していたようで無傷だ。
レオンは僕とヒカリが狂っているとか言っていたけど、一番おかしいのはこの子だと思います。
この子にとっては、膨大な数の隕石を全て弾き返すことさえも軽い運動の範疇だったようだ。
「ククク、ヒカリのヒールがかかった形跡がないな。つまり、全ての隕石を弾き返したってことだ。さすがはセンナだ」
「こんなの楽勝よ。時間が長かった事と、数が多かったので、ちょっと疲れたけど」
千奈は風に当たりながら、くつろいでいた。
「恐ろしい切り払い…………か。踏み込みが足りん!」
「足りてるわよ。変ないちゃもんをつけないで」
いつの間にかエリート兵扱いの千奈。
お前のようなモブがいるか。
「しかし、凄かったな。『俺』の方もかなり満足していたみたいだ」
最終的に全回復したので、『俺』は引っ込んでいた。
ここまで『餌』を与えたら、しばらくは、ちょっとした痛みでは目覚めないかもしれない。
「はい! 私もこんなに気持ちよかったのは初めてです! ケホッケホッ」
ヒカリの声は少し枯れていた。
多分10000回くらいヒールと叫んだのではないだろうか?
ヒカリは普段は自分のことを抑制しているから、思いっきりはじけてしまったようだ。
ただし、それぐらいやらなければ回復は追い付かない。
大量に降り注ぐ隕石に負けない速度で回復を唱え続けるなんて、ヒカリも人間やめてるレベルだよ。
「ああ、まだ回復した時の感覚が忘れられないよ~」
興奮しているのか、ヒカリの顔は紅潮しており、息は荒く目も潤んでいる。
とても色っぽいです。
つい彼女に釘付けになってしまう。
そして、そんな僕を見た千奈がこちらに寄ってきた。
「さて、話の続きよ。兄さん」
「な、何の話だっけ?」
「誤魔化しても無駄だから。あんなガキの拷問で喜ぶなんて、失望したわ」
や、やばい。拷問デビルの件をまだ根に持っているようだ。
なぜかその場にいなかったのに状況を把握している。
「さあ、答えて! 私とあのガキ、どっちを選ぶの!?」
「千奈に決まってるだろ! 当たり前のことを聞くな!」
そんなもの、どう考えても千奈だよ! 僕はロリコンでは無い!
僕の魂の叫びに千奈が一瞬たじろぐ。
納得してくれただろうか?
「ふん。まあいいわ。考えたら変な癖を付けられたのなら、それ以上の刺激で上書きしてやればいいのよ。元の世界に帰ったら、今度こそ私でなければダメなように、兄さんを徹底的に調教してやればいい。そうよ、そうすればいいんだわ! ふふ、フフフ」
千奈は爪をガリガリと噛みながら恐ろしい事をつぶやき始めた。
僕は元の世界に帰ったら、どうなってしまうのでしょう。
ちなみに事の元凶であるレオンの方は、どうなったかというと……
「あはは……ひひひ」
完全に精神崩壊をおこしていた。
もはやしばらくの間、再起不能であろう。合唱。
体は不死身であるが、精神の方はそうもいかなかったようだ。
こんな形で最強の敵を倒すことになるとは……。
いつか彼のメンタルが回復する日を祈っております。
「クク、完全にボクの計算通りだったな」
うまくいったことに満足げなリル。
確かにこれは完璧な作戦だった。
ヒカリの強制回復のせいで実際に相手にはダメージを与えられない。
でも激痛という精神的ダメージは与え続けることができる。
僕は激痛が精神的ダメージにならず、千奈はアルマゲドンを全て回避可能なので、問題ない。
でも敵は耐えることができないだろう。
僕とヒカリの体質、千奈の能力に、リルの破壊力。
全てが噛み合った作戦である。
「これで決定したぜ」
リルの目がキラリと光った。
そして彼女は絶対の自信を持って言葉を続けた。
「狂気の神ゲーマーのボク。死神ヒーラーのヒカリ、天才剣士のセンナ、そしてロリコンのトオル! ボク達は、間違いなく最強のパーティーだ!」
待って。僕だけ二つ名がおかしくない??
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