第73話 不死身となった男

 首の無い状態のレオンが千奈に向かって剣を振り下ろした!


「なっ!?」


 ギリギリでその攻撃を避ける千奈。

 それと同時にレオンの首が再生されていく。


「なにこれ。どういうことなの?」


「言っただろ。レオンはなんだよ。そいつはいくら倒しても復活する。つまり、不死身ってわけだ」


 不死身!?

 奴は文字通りの『無敵』だということなのか!


「そういう事だ。残念だったな。これが俺の最強のレアスキル、『不死』だ。つまり、お前らに俺は倒せない」


 再生を終えたレオンが笑っていた。

 不死って……嘘だろ?

 そんなの反則じゃないか!

 どうやって倒せばいいんだよ。


 本当にレオンは、魔王より厄介かもしれない。

 むしろ、こいつこそが最強の敵だと言ってもいいのではないだろうか?


「ち、厄介な男ね」


「いや、これはいいタイミングだぜ!」


 いつの間にかリルが大きく距離をとって、呪文の詠唱を始めていた。


「みんな、『カオス・オブ・アルマゲドン』を発動させるぜ!」


 さっきリルが思いついた『最強の作戦』だ。

 そうか! があったか!

 確かにならレオンを倒せるかも知れない。


「なるほど! ふふふ。腕が鳴ります!」


 ヒカリも嬉しそうに呪文を唱える姿勢に入っている。


「なんだ? 何かするつもりか? 無駄だぜ」


 不死身のレオンは、どんな攻撃を受けても生き返る。余裕の態度だ。

 そんなレオンには意も介せず、リルは呪文の詠唱を続けていた。


「破滅の流星よ、『全て』の敵を撃ち滅ぼせ!」


「そ、それはアルマゲドンか!? 馬鹿が! 今その魔法を撃てば、人質はもちろん、そこの女剣士も死ぬことになるぞ」


 アルマゲドンの詠唱を見たレオンは、一瞬だけ驚愕の表情を見せたが、すぐに元の態度へと戻った。


 ヒカリはリルより後ろにいるので大丈夫だが、僕と千奈は完全にアルマゲドンの射線上にいるため、これでは同士討ちになってしまう。


 レオンは、アルマゲドンの発動をブラフだと思っているようだ。

 そう、本来なら味方を巻き込むアルマゲドンは使えない魔法だ。

 だが……


「ククク、もう止められないと言っただろう。闇の波動は一度目覚めたら、全てを食らい尽くすのだ!」


「ハッタリだ! 本当に撃てるはずがない!」


 笑いながら馬鹿にするレオン。

 それでもその声には、半ば祈るような感情があふれ出ていた。

 しかし……


「さあ、目覚めよ……我が闇よ」


 そして、ついにリルはその眼帯を取り外し、投げ捨てた。

 やはりと言うべきか、その目はもう片方とは違う色の目だった。

 俗に言うオッドアイというやつだ。


 さらに手の包帯も外していく。

 むき出しになった手には、蛇のような紋章が描かれていた。


「もう、後戻りはできないぜ。巻き方を忘れちまったからな」


 ただの中二病と馬鹿にするなかれ。

 この世界は中二病の人間ほど強くなれるのだ。


 体中から凄まじい光を放つリル。

 最大レベルの『中二病ブースト』が発動している。


「終焉の始まりだ! 虚空の彼方へ消え去れ! アルマゲドン!」


 リルは躊躇も容赦もなく、最強呪文を発動させた。

 そして僕はこの瞬間、『俺』へと切り替わった。

 今回の作戦は、性格的に『俺』の方が向いているのだ。

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