第71話 拷問デビルVS俺

 拷問されるも嬉しそうにしている俺。

 それは拷問デビルのプライドに傷をつけたようだ。

 だが……


「これならどうだ! さらに強烈な魔法だ!」


「ぎゃああああああ!」


「ふふふ、さすがにこれは耐えられないでしょ、お兄ちゃん? これで終わり……」


「駄目だ。まだ足りぬ。俺を屈服させたくば、この3倍の痛みを持ってこい」


「な、なにいいいい!?」


 まだまだ余裕を見せる『俺』。

 対照的に拷問デビルには余裕がなくなってきているように見える。


「ふ、ふふふ。いいよ。3倍の痛みだ! これで沈めぇぇぇ!」


「ぐおおおおおおおお!」


「ふ、今度こそ終わったね、お兄ちゃん」


「いや、あれは嘘だ。実は俺を屈服されるには、あとの痛みが必要だ」


「さ、さ、3000倍ぃぃぃ!?」


 思いもよらぬ発言で、拷問デビルは目をむいてしまう。


「そ、そんなの無理……」


「無理だぁ? 諦めるんじゃない! お前は拷問デビルなんだろ? 屈服させてみろよ! 誇りはどうしたぁぁぁ!」


「……う」


「拷問を極めろ! 限界を超えろ! 日々をかけて、拷問の腕を上げ続ける事で、ようやく成長へと繋がる。それともお前は、下等生物なのか!?」


「ぐ、うおおおおおおおおお!」


 俺の言葉に触発されるように、拷問デビルは魔力を放つ。


「いいぞ、80点! だが、まだだ。もっとだ。もっとぉぉぉぉ!」


「無理です! もう、魔力は出せません!」


「無理と思うから無理なんだ! 限界を超えろと言っただろう! 生命力を全て魔力に変換して、俺を拷問するんだ! お前の誇りは、その程度じゃないだろぉぉ!?」


「うわあああああああ!」


 もはやどっちが拷問を受けているのか分からない。

 拷問デビルも、拷問にかけて『誇り』があるからこそ、そのプライドのせいで、引っ込みがつかなくなっている。


「素晴らしい! これぞ究極の拷問。90点をやろう!」


「あ……はは。やった。あたしは……拷問を……極めた……ぐふぅ」


 そうして拷問デビルは、光に包まれて消滅した。


「く、この馬鹿! 魔力を使い果たして、力尽きやがった! 愚か者め!」


「レオン。そう言ってやるな。美しい散り際だったじゃないか。俺は彼女の最後を、永遠に忘れないだろう」


 『俺』は感動して泣いていた。意味が分からん。

 いや、そんな事より別の問題が生まれつつある。

 ある意味では最初から危惧していた事だ。


「…………もうこいつ、殺した方がいいんじゃね?」


 しまった!


 ついにレオンがその冷静かつ、当たり前すぎる『正論』にたどり着いてしまったっっ!

 そうならないために、苦しんだフリをしていたのに、これじゃ本末転倒だよ!


「迂闊! すまぬ、ご主人様」


 すまぬ、じゃねぇぇぇぇ! どうするんだよぉぉ!


「とりあえず、満足したし、一回戻すわ」


 そそくさと、再び僕に主導権を戻す『俺』。

 いや、今更戻されても……どうすればいいんだよ!


「レ、レオン。ちょっと待ってくれ。話を聞いてくれ」


「聞かねーよ。てめえは危険だ。今すぐ殺す!」


 だ、ダメだ! 鎖で体は動かないし、もうどうしようもない。

 このまま、僕はレオンに殺されてしまうのか!?


「トオルさん!」


 その時、ヒカリの声が聞こえてきた。


「なんとか魔力を追ってくることができたぜ! トオル、生きてるか!?」


 続いてリルと千奈が現れた。

 皆が助けに来てくれたのか! ギリギリ間に合ったっっ!


(くくく、良かったな。ご主人様)


 こいつ、さてはみんなが来てくれていた事に気付いていたな?

 とんだドッキリを食らわされてしまった。

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