第69話 レオンの罠

 僕達はリルが提案した作戦を聞き終えた。


「以上だ。ククク、作戦名は……『カオス・オブ・アルマゲドン』だ!」


「…………」


 神ゲーマーはゲームのセンスは神だが、ネーミングセンスは微妙だったようだ。


「う~ん、無茶な作戦だな」


「そうですね。でも……私はこの作戦、素晴らしいと思います」


「ま、いいんじゃない」


 洞窟の出口に向かいながら、皆と作戦について話し合う。

 それは言葉通り、非常に無茶な作戦だったのだ。


 だが誰も作戦について異論を挟まなかった。

 それどころか全員の目が輝いていた。


 なぜなら作戦名『カオス・オブ・アルマゲドン』は、我々全員が普段満たせないを満たすことができるからだ。

 肝心の作戦の内容だが、それは……


「……んっ?」


 考えていると、僕は妙な違和感を覚えた。

 それは地面から来るものだ。

 よく見ると、地面が光っている。

 なんだこれ?


「っ! まずい! 罠だ! 避けろ!」


 リルの掛け声に、僕以外の全員が即座に飛びのく。


「……え?」


 しかし、僕はまたもや反応することができなかった。

 ハイドラの時と同じく、僕に一瞬で罠を避けるような反射神経なんて存在しない。


「うわああああ!」


「ああっ! トオルさんが!」


 僕の体が地面に飲み込まれていく。


「兄さん!」


「くっ。魔力を追ってすぐに助けに行く。それまで頑張って耐えろよ、トオル!」


 皆の叫び声を最後に、僕の体は完全に地面へと飲み込まれた。

 目の前が真っ暗になる。


 平衡感覚も無くなった。

 だが、それも一瞬で、すぐに視界が開けてきた。


「ううっ。何が起きた? みんなは?」


 感覚が戻ってきたので辺りを見渡してみる。

 しかし、思うように体が動かない。


「なっ、なんだ!? ……う、動けない!?」


 そこで僕は自分の両手足が、鎖のようなもので繋がれている事に気付いた。


「よお、いくら待っても来ないからさ。こっちから出向いてやったぜ。トオル」


「レ、レオン!」


 そこにはレオンがいた。

 奴はニヤニヤとしながら僕を見ている。

 どうやら僕は、レオンに捕らえられてしまったようだ。


「くくく。あっさり罠にかかったよなぁ。今のお前は動けない状態だ。その鎖は物理無効なので、内部から引きちぎるのは不可能だぜ」


「くっ!」


 これは大ピンチだ!

 底力が発動しても、物理的に鎖を引きちぎれないなら、どうしようもない。


 このままでは為す術もなくやられてしまう。

 絶体絶命だ!


「このまま殺してもいいが、お前が助かる方法もあるぞ」


「ほ、本当か? どうすればいい!?」


 僕が生き残れる道はたった一つ。

 目の前のレオンの良心にかけるしかない。

 だが、奴に良心なんてものはあるのだろうか?


「俺達の仲間になれ。魔族に転生しろ」


「…………」


 そう来たか。

 奴の本当の目的は、僕を魔族にすることなのか。


「お前、ハイドラを倒したんだってな? なかなかやるじゃないか。殺すには惜しいぜ」


 僕を魔族にしたければ、無理やり肉体改造でもなんでもすればいいのに、それをしないはなぜだ?


「このゲームはちと厄介でな。本人からのが無ければ、魔族に転生させることはできないんだ。つまり、お前の了承が必要だ。さあ、どうする?」


 僕の心を読み取ったかのようにレオンが説明する。

 つまり僕が首を縦に振らなければ、魔族に転生させることは不可能なのだ。


「……こ、断る」


 震えながら、なんとか声を絞り出した。

 僕にはすでに仲間がいる。いまさら魔族に転生するつもりはない。


「ふふふ」


 僕の答えを聞いたレオンは、なぜか嬉しそうに笑う。


「そうか。なら、する必要がありそうだな」

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