第68話 使い物にならない最強魔法

 翌日、聖水を使ってメタル狩りを続けた僕達は、いとも簡単に最高レベルに達することができた。


 皆のステータスは大幅に上がっている。

 レベル1の時は、ステータスの数値が平均100程度だったが、今は全てのステータスが900近くまで上がっていた。


「ふん。これで魔王なんて楽勝ね」


 天才の千奈がレベル99になったという事は、それはもう最強なのではないだろうか?

 魔王でもなんでもあっさり倒せる気がする。


「いや、はっきり言おう。今のボクたちでも、ネビュラに勝てるかは怪しいぜ」


 しかし、リルは警戒した表情で答えた。

 ネビュラとは、そこまで強いのか。


「それに強敵はネビュラだけじゃない。奴の腹心の部下であるレオンにも注意が必要だ。できれば出会わずにネビュラまで行きたいところだ。もし出会ってしまったら、逃げるしかない」


 レオンか。

 奴も相当腕が上がっていると考えていいだろう。

 でも、リルがここまで警戒するのも珍しい。


「ああ、あの城にいた奴ね。あいつから先に倒したらいいんじゃない?」


「無理だ。奴はだ。考えようによっては、ネビュラよりレオンの方が強い」


 無敵?

 そういえば前もレオンが自分のことを『無敵』と言っていた気がする。

 それほどの強敵という事だろうか。


「そうですか。やはり簡単にはクリアーできないみたいですね。……あ、そういえば、そろそろリルさんの最強魔法について教えてもらえませんか?」


 ヒカリの言葉で、リルが最強魔法を使えると言っていたのを僕も思い出した。

 敵がそれほどの強敵なら、リルの最強魔法というのも必要となるのではないだろうか?


「クク、我が最強魔法か。残念だが、あれは使い物にならないんだ」


「使いものにならない? どういうことなの? 説明してもらえる?」


「いいだろう。眠れし我が最強の魔法名は『アルマゲドン』。無数の隕石が敵を貫く最強の魔法だ」


「へえ、隕石ね」


 最強魔法と言えば、隕石のイメージ。

 ゲームではよくある設定だったりする。


「一つ一つの隕石は、手のひらサイズで、威力もそれほどでもないが、とにかく数が多い。だから、最終的には凄まじいダメージを叩き出せる」


「それはすごいね。何か問題があるの?」


 聞く限りは凄まじい魔法だ。

 これは心強いと思うが。


「ただし、重大なが二つある」


「弱点?」


「一つは詠唱時間が異常に長い。そしてもう一つ、致命的なのが、この魔法は特殊で『味方』にもダメージが通ってしまうのだ。つまり、射線上にいる奴は、敵も味方もまとめて滅びるのだ」


「なるほど。確かにそれは微妙ね」


 千奈が残念そうにため息をついている。

 詠唱時間が長い。

 つまり、誰かが足止めをしなれけばならない。


 しかし味方にダメージが通ってしまうなら、いざ詠唱が終わって魔法を放った時には、足止めしていた人間もまとめて死ぬことになる。


「だからアルマゲドンは使えない魔法…………んっ? いや、待て」


 リルは頭を捻っていたが、いきなり何かをひらめいたように手を打った。


「ククク、いい作戦を思いついたぜ! このメンバーでなら、アルマゲドンを使うことができる!」


「え? どうするの?」


「ククク、それはだな……」


 リルの目がキラリと光った。

 いったい僕達に何をさせるつもりなんだ?

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