第63話 一秒で死んでしまう強ボス
ほぼ全てのモンスターを一人でやっつけてしまった千奈。
しかし、奥から一匹だけ新たなモンスターが姿を現した。
僕はその姿に見覚えがあった。
「あれは……ゴブリン亜種!?」
それは以前、僕達から逃げ延びたゴブリン亜種だった。
こんなところまで逃げていたのか。
「いや、違う! あれは『ゴブリン希少種』だ!」
リルが驚愕の表情で敵を見ている。
ゴブリン希少種? さらにやばい相手か!?
よく見ると、そのゴブリンは以前とは違い、金色に光り輝いていた。
「ゴブリン希少種は、ゴブリン亜種が百匹に一匹の確率で変異する究極のゴブリンだ。その強さは、ハイドラと同等……いや、それ以上と思っていい」
なんという事だ。
僕達が以前にゴブリン亜種を逃がしていたせいで、奴は凶悪な敵に進化してしまった!
このままでは、千奈が危ない!
「グガァァ!」
目にも止まらぬスピードで千奈に襲い掛かるゴブリン希少種。
なんというスピードだ!
「千奈! 気を付けろ! そいつはかなりの強敵……」
千奈に危険を伝えようと思った僕だが、その言葉を途中で止めてしまう。
なぜなら、僕が言葉を発する前に、ゴブリン希少種の首がポロリと落ちたからだ。
「兄さん? 何か言った?」
一瞬、何が起きたのか分からなかった。
千奈はあのゴブリン希少種すらも他の雑兵と同じく一撃で倒してしまったのだ。
僕にはあまりにも早すぎて、どうやって千奈が相手の首を落としたのか分からなかった。
隣で見ていたリルは、この光景が衝撃だったのか、ポロリと杖を落としてしまった。
「貴公、その力、王の器か?」
「なにを言っているの?」
「褒めているんだよ」
僕の通訳を聞いた千奈は、一瞬の間を置いた後、自慢げな表情となった。
「そう。なら、これでどちらの方が上なのか、理解できたかしら?」
「認めるさ。センナこそが、まさしく天才だ」
見下したような千奈の視線に対して、リルはこの上なく喜んでいる。
「そ、そう。意外と素直なのね」
千奈は肩透かしを食らったような顔をしていた。
もっと噛みついてくると思っていたらしい。
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