第60話 眼帯は中二病の拘りです!!

「ただ、ネビュラは強敵だ。簡単には勝てない。戦ったから、分かる」


「えっ! リルさん、魔王と戦ったことがあるのですか?」


「ほう、それはいい情報ね。どんな奴だったか、教えてくれないかしら?」


 今まで興味なさそうな顔をしていた千奈も、手のひらを返したようにリルに頼み込む。


 この世界は、ほとんどゲームと同じだが、ネビュラやハイドラなどは、ゲームには存在しない敵キャラだった。


 きっとこの世界オリジナルのボスなのだろう。

 情報はぜひとも欲しい。


「はっきり言う。レベルが99でも全く歯が立たなかった。あれはレベルだけじゃ勝てない。ボク達は何とか逃げ帰ることができたんだ」


 神ゲーマーと呼ばれたリルが最高レベルでも勝てないとは、ネビュラは相当の強敵のようだ。


「あの町の奴らは、もう勝つことを諦めている。今は自分より弱い奴を馬鹿にする事を楽しみに生きているらしい。もう中二病の心も残っていまい」


 あのガチ勢様たちでさえ辛辣なリル。

 ある意味では、ガチ勢様より厳しい。


 だが、確かにレベル99で勝てないような相手なら、さらにそれ以上の強みが必要となる。


「やっぱり、リルは物知りだね」


「クク、ゲームの事なら任せろ」


 この際だ。気になる部分は全て聞いてしまおう。


「ねえ、その眼帯って、見えにくくないの?」


 あまり攻略に関係ない事でした。


「この眼帯は無限に魔力を食らい尽くす呪いのアイテムだ。こうやって自らを弱体化させて、相手との戦いを楽しむのだ」


「まさかの舐めプ!?」


「ククク、冗談だ。まあ、頭に鈴くらいはつけてもよかったかな」


 そこまでの縛りプレイは勘弁である。

 どうせ後半は外しそうだし。


「安心しろ。これはメイクアクセサリーだから、視界はきちんと見える」


「そ、そうか。よかったよ。ならその眼帯に、特に意味は無いんだね」


「どうせなら、両目を布とかで塞いでしまえばかっこよかったな。心眼みたいな感じで」


「ティンべーとローチンとか使う盲目で異常聴覚なキャラになりそうだね」


「いつだって基本的戦法こそが最強なのさ。最後は上半身だけ千切れてぶっ飛びそうだけどな」


「あ、それなら僕、この前に体験したよ。この世界だと体力は5だけ残るから、即死じゃないんだ」


「なるほど……………え?」


 聞き間違いか、とリルが周りを見渡す。


「ああ、そんな事もあったわね。見事に上半身と下半身が真っ二つだったわね」


「あれは大変でしたね~」


「…………」


 周りの反応を見て、リルが戸惑っていた。

 レアな反応が見られたな。


「トオ/ルになっちまったのか?」


「いや、まあ、うん。……あ、敵が現れたよ!」


 誤魔化すように僕は指を刺した。

 そこには、モンスターの大群がいた。


 しかもここは終盤のダンジョンだ。

 言うまでもなく、強敵だろう。

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