第59話 低レベルでゲームをクリアーできる人は凄い!!

「では、まずはお前らのレベルを99にするぜ。さすがに30のままじゃ、不利だからな。この先の洞窟に、レベル上げに絶好のポイントがある。案内しよう」


 僕達はリルに連れられて、レベル上げに有効らしい洞窟へと移動していた。

 ゲームの攻略において、最も重要なのは情報である。


 様々な情報を得て、効率的に動くのが一流のプレイヤーと言えるだろう。

 そういった意味でもたくさんの情報を持ったリルが仲間になったのはありがたい。


 しかし、すでにレベル99でガチ勢様のリルが、僕達の仲間になっても、向こうにとって得となる部分が全く無い。

 なぜ彼女は、僕達のパーティーに入ったのだろう?


「ねえ、あの子。ひょっとして友達がいないんじゃない? それで私達のパーティーに入ったのよ。いくら有能でも、友達が一人もいないなんて、寂しい子よね」


 偉そうに語る千奈。

 でも千奈さん、それは完全にブーメランです。

 千奈の声が聞こえていたようで、リルがこちらを見つめて口を開く。


「クク、友達がいなくて悪かったな。だがボクは、オンラインのフレンドなら百人以上はいるぜ」


「な、なんですって!? そ、そんな!」


 千奈が両手両膝を地面について、絶望していた。

 あの千奈がここまで敗北感に打ちのめされているとは珍しい。

 よほどリルにフレンドが多いのがショックだったらしい。


「で、結局、リアルの友達はいないから、僕達のパーティーに入ったって事でいいの?」


「違うぜ。ボクはとパーティーを組みたかった。それだけだ」


 よく分からない。

 それなら尚更、僕達みたいなレベルの低いパーティーとは組む理由が無い。


「なあ、それなら他の人とパーティーを組んだ方が良かったんじゃないか? 周りの人達は、レベルが99だったんだろ?」


「ククク。なら一つ質問だ。と、。トオルにとって、有能な人物はどっちだ?」


「そりゃ、レベル99でしょ。99の方が強い」


「はずれだ。レベルが99もあったら、誰でも簡単にボスを倒せるんだよ。だがレベル1でボスを倒すには、相当のテクニックと戦略が必要となる。将来的に考えると、本当に有能なのは、低レベルでボスを倒せる奴だ。そんな奴がレベル99になったら、とてつもない戦力になるだろう?」


 なるほど。

 確かに僕は直接的な強さしか見ていなかったが、将来的に考えたら、リルの言うことが正しいのかもしれない。

 リルは中二病だけど、思考はかなりロジカルらしい。


「信じられないが、お前らはハイドラを倒してレベル30になったんだろ? ってことは、ハイドラを倒す前はもっとレベルが低かった。そんな低レベルでハイドラを倒せるなんて天才的な腕前なんだぞ」


 そうなのか。

 ちなみにハイドラを倒した時のレベルは1でした。


「確かにお前らはゲームの知識が無い。だから、周りの奴らは馬鹿にしていた。だが、ボクは光るものを感じたぜ。ゲームの知識やレベルなんて、後でなんとでもなる。大事なのはプレイヤースキルさ」


 すごいな。この子は普通の人より一歩先を見ているようだ。

 ガチ勢様とはまた違う。


 それより更に特殊な、それでいて別次元の思考を持っている。

 これが狂気の神ゲーマーと言われる人間の視点なのか。


「だから、期待しているぜ? ボクより百倍強いセンナさん?」


 リルは『らしい』の部分を強調して、挑発的に千奈を見つめる。

 千奈の方は、その視線を涼しい顔で受け流していた。


 おそらく、互いに自分の方が上だと思っているのだろう。

 神ゲーマーと天才。どちらが上なのか、僕も気にはなる。

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