第58話 狂気の神ゲーマー(中二病&ガチ勢様)が仲間になりました!

 レベル30で自慢していたら、狂気の神ゲーマーはレベル99だった。


「言っておくが、この町の人達は、全員がレベル99だぜ?」


「ええええ!?」


 恐ろしい事実を知ってしまった。

 予想はしていたが、本当にこの町の人々はレベルが高かった。


「ククク、ハイドラを倒してもレベルが30とか、普通じゃないんだが、本当なのか?」


「うっ、それが本当なのです。ごめんなさい」


 ヒカリが申し訳なさそうに謝る。

 どうやら、僕たちの方が完全にイキっている世間知らずだったようだ。


「まさか、この町の人たちは、全員が『ガチ勢様』なのでは?」


 ガチ勢様。それは、ゲームに命を懸けている方々の事である。

 ガチ勢様は、ただひたすら効率化だけを目指し、それ以外のものを徹底的に排除する。


 ガチ勢様にとって、ゲームは人生を捧げるべき仕事であり、日々のプレイにノルマまで課している人もいるのだ。

 それを守れない人間には、徹底的に制裁を加える。

 塵の一粒でも非効率な行動は許さない。


 できない奴は、全て甘え! 体を壊してでも、やり遂げろ!

 一分以内にモンスターを倒せない火力の奴はゴミ! 

 無敵回避できない奴はクズ! 

 敵の攻撃を一撃でも食らう奴は死刑っっ!


 正直、頼もしいを通り超して、怖い人たちである。


「はっ!?」


 そんな事を考えていたら、周りから異常な殺気を感じた。

 な、なんだ? この恐ろしい気は?

 それも、一つや二つじゃないぞ。


 恐る恐る周りを見てみると、それはガチ勢様たちの殺意の籠った目だった。

 それは、完全に大罪人を見る目である。


「あいつら、レベル30ごときで偉そうにしていたのか?」

「遊びじゃねーんだよっっ!」

「レベル30なんかじゃ即死だろ。消えろ」

「ダメージワールド舐めてねーか?」

「俺なんか、ダメージワールドのために、高校辞めたんだぞ」

「学校辞めるくらいミジメにやれ、ってことだよっ! クズがっっ! …………間違えた。マジメだった」


 怖っ! ガチ勢様の人たち怖っ!

 一人だけ面白い言い間違えをしているので、草不可避(笑える)だが、とにかく彼らの逆鱗に触れてしまったようだ。


 しかも、さっき僕の事を見て逃げた奴も、急に態度がでかくなって、その中に混じっている。

 集団心理というやつだろうか。


「うるさい連中ね。兄さん、どうする? こいつら全員、始末する?」


 怖っ! 千奈怖っ!

 この子はガチ勢様に対しても、全く臆することは無いようだ。


 これ以上この場所にいたら、地獄となる気がする。

 ここは、退散しておこう。


「えっと、失礼しました!! じゃあ、僕達はこれで……」


 僕はぺチっと自分のおでこを叩いて、その場を去ろうとする。

 まったく、とんだ恥をかいてしまった。


「おい、待て!」


「ひっ!?」


 そんな僕の手を掴むリル様。

 もしかして、説教が始まる?


「パーティーを組む話は、どうなった?」


 そう言って、リルがギロリと僕たちを睨んでいた。

 え? どういう事? パーティーを組む?


「ひょっとしてだけど、僕達のパーティーに入りたいの?」


「ああ、そうだ。ボクだと力不足か? なら交渉させろ。ありったけの情報とアイテムを差し出すから、ボクを仲間に加えてほしい」


「え、ええええええええっ!?!?!?」


 最高レベルのリルが僕達の仲間になる理由は無い。

 我々は完全に足手まといのはずだ。


「ふん。そこまで言うなら、仲間にしてあげてもいいわよ。感謝なさい」


 なぜか超上から目線の千奈。

 リル様はレベル99の神で、我々はレベル30の愚民なので、本来は立場が逆ですよ!?


「決まりだ。これからよろしくな。ククククク」


 千奈の態度も気にせず、嬉しそうに僕達のパーティーに入るリル。


「あ、あのリル様が、あんな雑魚とパーティーを組むなんて……いったいどうしてしまわれたのだ」


 周りが困惑している。僕にだって分からん。

 謎ではあるが、仲間としてはこの上ない実力者のリルが加わってくれた。

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