第57話 リルとの再会
仲間を求めるため、再び僕たちはハイパーボードで空へと飛びあがっていた。
「さて、どこで仲間を集めたらいいかな?」
「そうね。この近くの町がいいでしょう。最終ダンジョン前の町だから、レベルの高い人が集まっているはずよ」
なるほど。どうせ仲間を増やすのなら、レベルの高い人の方がいいという考えか。
「分かった。あそこにしよう」
僕たちはすぐ近くに見える町に降りた。
「え? ここが最後の町なのか?」
そこはかつてないほどにさびれた町だった。
特に前回のロックガルドが凄かっただけに余計に活気が薄いように見える。
「魔王の城の近くだからじゃないでしょうか? 危険なので、プレイヤーもあまり近づきたくないのかも」
ああ、そういう事か。
こんな所に住んでいたら、気が休まらないもんな。
逆に言えば、この町にいる人は全員が魔王討伐に本気の人が多いはずだ。
これは、ひょっとしたら強くて頼もしい仲間が見つかるのではないだろうか?
「よし! さっそく仲間を集めてみよう!」
僕は満面の笑みで片っ端から声をかけてみた。
「あの、すみません。僕達の仲間になってくれませんか?」
「ん? トオル? うわああああ! 魔王の手下だぁぁぁ!」
「えっと……ヒカリ? うわああああ! 死神ヒーラーだぁぁぁ!」
「なになに? センナ? うわああああ! なんか目つきが悪いぃぃぃ!」
しかし、僕達の姿を見ると、全員が一目散に逃げていく。
「…………忘れてた」
そういえば、僕は魔王の手下として悪評が広まっているのだった。
ヒカリの方も死神ヒーラーとして名が知られているようだ。
「いや、私、今回は何も悪くないわよね? ……ねえ?」
千奈の方はちょっと涙目になっていました。
うん、あれはもう、ノリで断られていましたよね。
とにかくまずい事になった。
考えてみれば、こんな変わり者パーティーに入ってくれるプレイヤーなんて、一人もいないのかもしれない。
このままでは、永遠に魔王の城に入れないぞ。
「くそ、ここで諦めてたまるか!」
こうなったら、自分の強みを最大に生かして勧誘するしかない。
「僕達はハイドラを倒したパーティーです! 一緒にこの世界を救いましょう!」
やぶれかぶれになって、上級者っぽい雰囲気を放つ魔法少女を勧誘してみる。
「ククククク、なるほど?」
すると、少女は興味津々にこちらを見た。
おお! 思いが通じたか!?
ん? というか、魔法少女?
この子はどこかで見たことがあるぞ。
可愛いドクロマークの眼帯に、手には包帯。
この魔法少女は……
「ククク、久しぶりだ、トオル。いい面構えになったな」
「君は……リル!」
それはこのダメージワールドに来た時、最初に一緒だった魔法少女のリルだった。
まさか、再び会う日が来るとは思わなかった。
そんなに日は経っていないけど、懐かしさを覚えてしまった。
「クククク、どうやら闇の力がボクたちを引き寄せてしまったようだな?」
そして決めポーズ。相変わらず、中二病である。
これもまた懐かしい。
あれから、色々とあったもんな。
とにかく、お互いに無事でよかった。
「うん、本当に久しぶりだ。会えてうれしいよ」
「あ、頭を撫でるな」
「おっと、ごめん」
久しぶりなので、つい頭を撫でてしまった。
「ボクが、可愛いから撫でたのか?」
「うん。ごめんね」
「そうか。……ククク、許そう。闇は時に寛大なのだ」
微妙に嬉しそうにしているリル。
やはり、懐かしいやり取りだ。
「………………兄さん。後で私も撫でてよね」
千奈が頬を膨らませている。
……ちょっと怒ってる?
「この人は、トオルさんのお知り合いですか?」
「うん。彼女はリル。ありとあらゆるゲームを極めている達人ゲーマーって話だよ」
「ええ!? ひょっとして、あの狂気の神ゲーマー、リルさんですか!? 私、ファンですよ!」
ヒカリが驚いたように声を上げる。
どうやら彼女はリルのファンだったようだ。
さすがはリル。かなりの有名人らしい。
「トオル、お前は魔王の部下になったって噂を聞いていたから、心配していたぜ」
「あれはにわか男が勝手に広めた嘘の噂だよ」
そのにわか男にはすでに天罰を下して、星にしてやりましたよ。
とりあえず、リルは実力としては申し分がないはずだ。
仲間となってくれるなら、きっと頼りになるだろう。
「見たところ、リルは一人のようだね。もしよかったら、僕達のパーティーに入ってくれないか?」
「クク、いいだろう。トオルは、少しは強くなったか?」
「大丈夫。少なくとも、私はあなたの100倍は強いわ。安心していいわよ」
千奈さんは当たり前のように、神ゲーマーさんに対して爆弾発言をしていた。
「ほう、自信はあるようだな。では、レベルはいくつだ?」
リルは自信満々の千奈に対して、さらに強気な態度で質問してくる。
僕達のレベルか。よくぞ聞いた!
僕達はハイドラを倒すことによって、レベルが30まで上がっていた。
あのミリアすら超えている。
これはもう、超ベテランプレイヤーと言っても、過言あるまい!
「聞いて驚きなよ。僕たちのレベルは30だ! あのハイドラを倒せるほどのレベルだぞ!」
「え? たった30なのか?」
リルが驚いたように声を上げる。
だが、言葉のニュアンスから、それにはガッカリ感の色がついているように見えた。
「う……ダメだった? そういえば、リルのレベルはいくつなの?」
リルのステータスを確認してみる。
30が低いと言えるくらいのレベルなのだろうか?
「………………え? レベル99??????」
なんと、リルはすでに最高レベルに達していたのだ。
や、やり込みすぎだ!
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