レベル99への道

第56話 レオン、再び!!

 ロックガルドの町を後にした僕たち。

 

 そんな僕たちは今、ハイドラ戦で入手したハイパーボードを使って空の旅を楽しんでいた。


 『空を飛ぶ』なんて体験ができるのも、この世界ならではかもしれない。


 これが中々に楽しい。

 本当に鳥になった気分だ。


「面白いわよね、これ」


 千奈に至ってはアクロバティックな旋回をしたり、きりもみ状に回転したりしていた。


 どうやら完全に、ハイパーボードを乗りこなしているらしい。


 相変わらずの天才ぶりである。


「それで、これからどこへ向かいましょうか?」


「う~ん。そうだな~」


 行動範囲が広まったからこそ、次にどこへ行けばいいのか迷ってしまう。


 ゲームでよくある現象というか、オープンワールドの自由度の高さが、逆に目標を立てにくくなってしまうのだ。


「それなら、魔王の城へ行きましょう」


「い、いきなり魔王の城か!?」


 千奈はいきなりラスボスへ挑むタイプだったらしい。


 確かに乗り物を手に入れた時点でラスボスへ挑戦できるゲームはある。


 このダメージワールドもその系統なのだろう。


「とりあえず、今の私たちがどこまで通用するのか、確かめておく必要があるわ。大丈夫よ。少し様子を見るだけだし」


 確かに僕たちはハイドラを倒したことで、一気にレベルが30まで上がった。


 今の千奈なら、ネビュラを倒せる可能性もゼロではない。


「ほら、ちょうど魔王の城も見えたし、行きましょう」


 偶然、僕たちは魔王の城の近くまで来ていたらしい。

 これはもう行くしかないか。


 千奈がそのまま城の方へ向かっていくので、僕たちもそのまま後へ続いた。


 ネビュラの城の前で着地。


 ラスボスの城だけあって、かなり禍々しい雰囲気が漂っている。


「ふ~ん。ここが魔王の城なのね」


 ピリピリと肌を刺すような殺気。

 果たして今の僕たちで通用するのだろうか。


「せ、千奈。本当に乗り込むのか?」


「うう、ちょっと無謀な気もします」


 僕とヒカリは、完全にビビり始めていた。


「いざとなったら、ヒカリさんの回復もあるし、大丈夫よ。でも、二人はなるべく下がっていてね」


 確かにヒカリの詠唱破棄があれば、そう簡単にはやられない。


 千奈はその部分も計算に入れているわけだ。


 まあ、勘がするどい千奈が『大丈夫』と言ったら、大丈夫なのだろう。


「さ、行くわよ」


 そうして、城の中へ入ろうとする千奈。


「あら?」


 しかし、弾かれるように後ずさった。


「なにこれ? 中に入れない。結界かしら」


「ああ、悪いなぁ。そこ、四人いないと入れないんだ」


 城の中から一人の男が歩いてくる。


「なんだ、トオルか。久しぶりじゃないか」


「お前は……レオン!?」


 それはネビュラの腹心の部下である魔人、レオンだった。


 奴とはモースの町で戦って以来だ。

 あの時と同じなら苦戦する相手ではない。

 だが、恐らく奴も強くなっているはずだ。


「きゃはは! レオン様ぁ! こいつら誰ですかぁ?」


 レオンの後ろから、褐色で小悪魔な少女が顔を出した。


「こいつはトオル。ちょっと前に、俺に勝った男だ」


「ええ!? こんなクソザコっぽいお兄ちゃんが、レオン様に勝ったんですかぁ? 信じられません~」


 小悪魔少女は馬鹿にするように笑っている。

 どうやらレオンの部下のようだ。


 専属の部下を持つようになったとは、レオンも大きく出世したみたいだな。


「たった三人でここまで来たのは誉めてやるぜ。だが、この場所は四人揃わないと通れない仕様なんだ。とりあえず誰でもいいので、もう一人パーティーに加えるんだな」


 四人揃っていなければ、城に入ることすらできないらしい。


「そういえばゲームでも、最終ダンジョンは四人揃わないと入れない仕組みになっているらしいです」


 ヒカリが神妙な顔で語る。

 変な所でゲームに忠実だな。


「四人集まったら、もう一度来いよ。その時に相手をしてやるさ」


 なんだろう。レオンの様子が少し妙だ。

 これは……異常な『自信』か?


 彼には絶対に負けない確信みたいなのがあるらしい。


 レオンは態度が性格に出るタイプだ。

 となれば、奴には自信に基づいた実力があるというわけだ。

 これは、一筋縄ではいかないのかもしれない。


「ふん、ずいぶんと余裕ね。今のうちに私たちを倒しておいた方がいいと思うけど?」


「くく。別に構わんさ。お前らがどんな仲間を連れてこようが、どれだけ強くなろうが関係ない。なぜなら俺はになったからな。絶対に負ける事はありえない」


 とは、ずいぶんと大きく出たものだ。

 である千奈と、どちらが強いのだろうか。


「きゃは、そういうことだよ。お兄ちゃんたちなんて、レオン様がいつでも殺せるからね♪」


 子供っぽく煽るような小悪魔。


 無邪気そうに見えるが、実はかなり残忍なタイプだと僕は見た。


 だいたいこういう奴は、楽しみながら人を殺したりするんだ。


「とりあえず、今はお言葉に甘えて仲間を探しに戻りませんか?」


「そうだね」


 今、ここでレオンと戦うよりは、仲間を加えてから決戦に挑む方が効率的だろう。


 千奈もそれに異存はないようで、僕達は一度引くことにした。


「だが、トオル。お前だけは、俺から出向いて殺してやってもいい。気が向いたら、こっちから行ってやるから、楽しみにしておくんだな」


 レオンから憎悪の感情を向けられる。

 やはりあの時の事を恨んでいるようだ。


「あーあ。レオン様に目をつけられた~。お兄ちゃん、もう終わりだよ~♪」


 残虐そうな小悪魔も馬鹿にするように僕を見つめていた。

 こいつも油断できないだろう。


「ち、ここでこいつらを殺したいところだけど、結界が邪魔で無理ね。命拾いしたわね」


 レオンたちは結界の中にいるので、千奈もここで戦うのは不利だと悟ったようだ。


 むしろ、今は向こうから攻めて来ないだけマシと思うしかない。


 奴らの動向に注意しつつ、仲間を集めよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る